鮭
鮭さん (8z9vrvz5)2024/1/12 00:41 (No.89870)削除〖ゼラニウム〗
『お前の名前ってなんか…女の子っぽいよね。』
「まあ確かにな。」
『なんで"サヨ"って名前なの?』
「そうだなぁ。教えられたんだけどな、サヨって名前は響きが綺麗だから純粋で綺麗な心を持つみたいな意味で付けたらしいぜ?そんなことないんだけどなー」
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
とある街の3月12日、とある男の子が生まれました。
両親に愛され、そして祝福され生まれてきた男の子は正に生まれながらにしての幸せ者でしょう。
生まれた男の子は"サヨ"と名付けられました。
サヨは両親に自分の名前の由来を聞いた日があります。
「お父さん、何で僕の名前はサヨなの?」
そんなサヨの問い掛けに父親はこう答えました。
内緒だと、いつか分かると、そう答えました。
その返答にサヨはいつか分かるんだと、分かる日が来るのが楽しみで楽しみで仕方ありませんでした。
何故、サヨという名前なのかを聞いた日から数年が経ちました。
サヨは元気に育ち、そしてサヨは綺麗なアイオライトのような髪、ガーネットのような瞳を持ちました。
サヨは数年経った後もまだ、自分の名前のことを知る日を楽しみにしていました。
そしてその時に、恋もしました。
サヨの心に一瞬で春が訪れたようでした。
今とは違う、子供特有の純粋な気持ちで恋をしました。
大好きな友達、その女の子にも恋を応援してもらい、いつか絶対に自分の気持ちを伝えようと思っていました。
ですが、大好きな友達は別の街に引っ越してしまい、初恋のあの子にも思いを伝えることも出来ずに別れてしまいました。
引っ越してしまった大好きな友達にプレゼントした黒いチョーカーを大事にしてくれてるといいな、そんな感情がサヨにはありました。
初恋の募り続ける思い、大好きな友達にまた会いたいという思い、それを抱えながらまた数年の月日が経ちました。
今まで気付きませんでしたが、サヨは気付いてしまいました。
母親と父親の仲が段々と…いや、今で最悪な程悪くなっていること、父親が自分を慰みもののように思っていること、母親がそんな父親とサヨに嫌悪を抱いていること、全て本能的に理解してしまいました。
そしていつしか、母親は1人で出ていってしまいました。
最後に見た母親の顔は己を酷く嫌悪したものでした。
突然として始まってしまった父親と2人だけの生活、自分を慰みものとして見ている父親との生活はまだ幼いサヨにとっては地獄のようなものでした。
毎日のようにぶつけられる父親からの暴力や怒号、欲情。
初めて自分の名前の意味がわかったように感じました。
どれだけ苦しくても、サヨは逃げることなんて出来ませんでした、幼い自分が計画も無しに逃げても野垂れ死にするだけ、それを分かっていたからです。
でも父親といでは自分の心も体も持たない、サヨはどちらの選択を取るかで悩んでいました。
結果、サヨは逃げ出すことを選択として取りました。
逃げ惑い続け死にかけサヨは、ある人に拾われました。
今のサヨの耽美主義の思想を植え付けた張本人です。
拾われてからはかなりマシな生活になりました。
毎日のように怒号や暴力を受けるわけではない、それだけでサヨからしたら幸せ以外のものはありませんでした。
サヨは昔、父親にした質問と同じ質問を恩人に聞きました。
「▇▇、何で俺の名前はサヨなんだ?」
恩人はこう答えました。
『サヨ、響きが綺麗だろう?だから純粋で綺麗な心を持つ、という意味で付けたんだよ。』
サヨはその言葉に心が軽くなり、少し救われたような感覚を覚えました。
恩人と暮らして数年、サヨはこれ以上恩人に迷惑をかけられまいと1人で暮らすことにしました。
その時の年齢は16歳です。
恩人と全く同じ趣味嗜好を持つようになった16歳のサヨは、今のサヨと少し違えども殆ど同じになりました。
それからしてサヨは初ナンパで親友を見つけることとなります。
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
「…▇▇、元気にしてるかなぁ…今も元気に美人ナンパしてるといいけど…」
「初めて教えてくれた俺の名前の意味、嬉しかったんだよなぁ…」
「んー…本当に今どこに居るか分かんね。」
「元気なら良いけど。」
白いゼラニウムと赤いゼラニウムの植えてある花壇を見つめる。
「あれ…なんか最近赤いゼラニウムが増えた…というか殆ど赤いゼラニウムだな…」