鼓
鼓さん (8zf1pchi)2023/12/31 22:34 (No.87988)削除眠気と戦いながら書いたからおかしいかもしれない…起きたら消すかも…
家を家族を失ったあと、そこら辺でかき集めた物で作られた義足で街をさまよい歩いていたまだ幼く何も出来ない少女、少女を家に連れ帰った中年ぐらいの男。普通なら警戒するが、その少女には頼れる場所がなかった。だからその男に素直について行ったし、もしもの場合は何とかして逃げるつもりだった。もちろん、何かされようならば抵抗する術はある、だがその男は少女に一切手を出さなかった。少女に暖かい食事を与え、温かい風呂に入れ、新しい服を買い与え少女を迎え入れた。『自分のことは好きに呼んでくれて構わない』『嫌なことがあればすぐに教えて欲しい』そう言って男は少女に"当たり前"の生活を与えた。連れ帰られ早4年。共に過ごしていくうちに少女は男と共に裏社会に染まっていった。軽犯罪は当たり前、重犯罪は最終手段。人を殺すことに罪悪感はあるわけない。その瞳は齢12歳にしてあまりにも冷酷で恐ろしいものだった。男と共に『アウトサイダー』という組織に入り、そこで少女は殺しの術を身に付け悪魔や呪いを狩って生きていた。それ以外は普通の生活を送っていた。
だが少女は気付いてしまった、男の底なしの優しさが己に向けられたものでは無いということ。男には想い人がいた、その人は幼いまま植物状態になりその後脳死判定を受けてその一生を終えていた。だが、男は彼女の美しさを忘れられなかった。光の灯らない大きく美しい瞳を、ピクリとも動かず真一文字に結ばれた口を、植物状態になる前に見た、怯える彼女の顔を。男は待っていたのだ、少女が彼女が植物状態になった時と同じ歳になるのを、そして再び、その男が自らの手で美しい少女をまた、植物状態することを。
日記を見てしまった、男の日記には全てがありのまま、赤裸々に書かれており少女に強い吐き気を催すほどの嫌悪感を抱かせた。その時から少女は男を見ることが出来なくなった。まるで、悪魔や呪いを見ているかのようで気を抜けば今すぐにでも殺してしまいそうで。少女は吐き気に催されながら毎日日記を読み続けた。遡って読んでいくととある事に気が付いた。それは組織に関係することでもあり、少女はそれを見てからひたすら駆け回った。あちこちに足を伸ばし、証拠を集めた。そして証拠が集まりきって男を断罪しようとしたその時、男の方が早かった。少女を想い人と同じようにしようとしていたのだ。男の口から彼女へ、そして少女へと溢れる想いが次々と繰り返し呟かれており、その姿はまるで『狂っている』ようだった。だが少女もその点については負けてはいなかった。なんせ、最初から殺すつもりだったから。事実を知ったその瞬間から少女は男を殺すつもりだった。衣食住を与えてくれたことには感謝している、だがそれとこれとは別物である。隠していた折りたたみナイフを取り出すと、仕事で身につけた身体能力、殺しの術を全て使って男の胸を一突きした。男は呻いて後退りをする、それでも未だ少女を手にかけようとする男に少女も容赦はしない。持っていた毒入りの小瓶を一気に口に含み、にじり寄ってきた男の首に腕を回して口付けを交わした。押し倒すようにして男を仰向けにし、男の口に毒を流し込む。男は抵抗しているが元々胸を刺され弱っていたその体は毒を流し込まれていくたびに力が弱まっていき、ついには動かなくなってしまった。息絶えたのを確認すると少女は毒のついた唇の端を袖で拭った。マッチに火をつけて男の腹の上へ放り投げる。順番が前後してしまったが、ガソリンを周りに撒いて男の腹の上で燃えていたマッチをガソリンの上へと投げる。一気に燃え盛り、男はあっという間に炎に隠れてしまった。
少女は組織へ戻ると男が犯した罪を告発。証拠も渡した上で男の居場所は分からない、と証言した。男が生死不明のため組織も何も出来ずにその件は無かったことにされた。それから2年、告発した少女はその後も悪魔呪い狩りを続け実力、名声を上げていった。それもあってか、14歳にして幹部に抜擢された。周りの構成員達は自分達がなるものばかりと思っていたため、少女に向けられる視線も言葉もキツイものだったが少女はそんなものに動じず、幹部としての仕事だけはしっかりとこなしている。
少女はかつて2人で暮らしていた部屋でラジカセのスイッチを押す。流れたのはよく2人で聞いていた邦楽。男が好きでずっと聞いていた、どういう意味なのか、どこがいいのかは全く分からないが聞いていくうちに口ずさむほどになっていた。男の物が全てなくなってしまったその部屋で少女はかつて受けた偽りの愛を探して今夜も1人、眠りについた。