緑
緑茶さん (8z88g5i0)2024/5/25 23:51 (No.106150)削除【rosa blanca y trébol blanco】
同じ銀の髪
柔らかく儚い肌
純白のドレス
花に彩られた化粧
眠り姫のように起きない姉
辛くない、苦しくない、悲しくないと言えば嘘で、それでも無力なシアワセには信じることしかできなくて
それがどれだけ歯痒く、そしてまたシアワセを苦しめることかは想像に容易いことであろう
姉は50年前からずっとこの状態
どうしてこうなってしまったのか
何か悪いことをしたか?
罪を犯したか?
誰かを不シアワセにしたか?
そんなことしてないだろう
ならなんの罰なのだ
なんのための試練なのだ
何故自分が、何故姉が、どうしてと嘆くことしかできない無力さよ
どうして自分では無く姉なの
自分なら良かったのに
姉がシアワセなら、自分はシアワセじゃなくても良いと言うのに
どうしてそれを叶えてくれないのか
涙は流れる
けれどそれを消すように、何回目かも分からない動作で、目を擦る
いつしか染み付いてしまった癖
悲しい時や苦しい時、辛い時、痛い時は決まってフェリスはこの動きをしてしまう
すぐに涙を拭うように
泣いたって意味が無い
涙は人を変えない
だから泣かない
泣いてもすぐに涙を消す
どうしたら目を覚ましてくれるの
どうしたら前みたいに笑いながら名前を呼んでくれるの
どうしたら
ふっと切れたように、意識が白く混濁する
その中で見たのはやはり、シアワセを今はそうでは無いと知らず残酷なものであった
『フェリス。私の可愛いフェリス』
『どうしたの?また絵本読んで欲しいの?』
『フェリスは本当にいい子ね。私の自慢の妹よ。』
『シロツメクサのように愛らしいフェリス。』
『あなたは____になってね。』
白昼夢でも見ていたのだろうか
だとしたら、最悪な白昼夢だ
こんなにも残酷な夢があってたまるものか
どうして今、過去の姉を思い出すのだ
思い出したって、姉の状態が変わることは無いと言うのに
なら、何故見たの
どうして見てしまったの
ポツリと始まりの雨のように呟いてしまった
「無理だよ」
「無理だよ、お姉ちゃん」
それは無理だ
だって"今"がシアワセでは無いと言うのに、どうシアワセになれと言うのだ
今がこんなにも苦しくて痛いのに
シアワセになれるはずが無い
シアワセになって良い資格が無い
だからシアワセになれない
なりたいけれど、ならない
あなたはシアワセのことをシロツメクサのようだと言ったけれど、それは違う
だってそんな愛らしさは無いから
だからあなたの方がそうだ
あなたは白薔薇だ
死んだように寝ているのに温かい姉の手を握る
その手に落ちたのは何か
ただその言葉は、誰かに聞こえることはなかった
「もうひとりはやだよ…」
この言葉をいつか、誰かに言えるたら良いな、なんてそれすら言えないけど