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ヘルさん (90xdn9d1)2024/4/28 21:42 (No.103837)削除
【鬼神の姫の思う事】

可愛らしい女の子だったら、もっと、魅力、あったかな、


なんて考えてしまう毎日母様のように、綺麗で可憐だったら、



彼はもっと好きになってたのかな、


痛い、足が痛い、腕が痛い、焼けるように痛い。



「ぅぁッ…!!、あーーー…。」



変な声を出す。同棲を決めて、少しした日の夜。



彼も彼の部屋の掃除があるから、今日は別々。



嫌だ彼が死ぬ。また思い出してしまった。


「いやだ、お願い、死なないで、」



そう言ってしまう。毎夜毎夜言ってしまう。



会いたい






会いたい




彼に会いたい、

大切な人に会って


何をしたい?


私は……


抱きしめたい

抱きしめられたい

他愛のない話で笑いあいたい

料理も作りたい

ゲームも頑張ってしてみたい

愛されたい

愛してあげたい

甘く蕩けることもしたい


だけど、もっとあるの



もっと、もっと一緒にいたい。

離したくない

ずっと貴方を離したくない、

貴方と一緒に生きたい

誰の瞳の中にも行かないで欲しいの

ずっと私を見て欲しいの

どこにも行かないで欲しいの

ずっとずっと、自分と貴方の命が尽きるまで



一緒にいたいの




なんでこんな事思ってるの私、



意味分かんない




クソ野郎(父親に)似ちゃった。




やめよう。この話。















ずっと、貴方と生きていたい。












いつのまにか、寝ちゃった。


朝、9時ごろ、眠い。二度寝したい。

準備しなきゃ、

彼との同棲、

どんなになるんだろう

楽しみ

色んな事したい。
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グラサンさん (92cyh0px)2024/4/28 17:46 (No.103819)削除
御伽噺ならきっとハッピーエンドだ

化け物だった女の子が恋をして結ばれて

幸せになって幕を閉じる




けど…現実はそんなに甘くない

そんな甘い幕引きをさせてくれる訳がない




暗く暗く明かりが灯されてない部屋

可愛らしい女の子のお部屋

如何物 可愛の部屋

その部屋にある浴室から嫌な音が響いてる

肉が切られ、骨がおれる音

泣きじゃくる女の子の声

嫌な血の匂いが漂ってくる。

ぐちゃり…ぐちゃり…ギリ…ゴリ…ぐちゅ…

嗚咽と悲鳴とも取れる声ともに聞こえてくる聞くに絶えない音

血塗れた手
周りに散乱した肉や骨の破片
その真ん中にいる女
口の周りは血にまみれて涙が溢れてぐちゃぐちゃになりどんな顔をしているかも分からない
歯が肉を通す音が耳を通して心を縛り付けてくる
肉切り包丁で足を落とす音が響き渡り「ア゙ア゙ッ!!」とした悲痛な絶叫が響き渡り、 ポロポロと涙が共に溢れて止まらなくなる
切った箇所から溢れる血が酷く熱く、苦しく…声を出すのもままならない
お腹の虫がおさまらないから何度も何度も食べて食べて切って切って食べて食べて切って切って再生した腕を食べて足を食べてを繰り返す
一体何度繰り返したのだろうか。
叫んで泣いて絶叫して痛みに悶えて食して…まるで化け物
いや最初から彼女は化け物だ

貴方は化け物じゃないと言ってくれたけどやっぱりそうとは思えない

自分は化け物だと罪人なのだと、この状況がそれを突きつけてくる

化け物のくせに恋をしたからこうなったのだと

足りない足りないまだ足りない
食べても満足出来なくて自分の身体を切り刻む
また再生した身体を食べて……何が何だか分からなくなる
痛い、苦しい、辛い、助けて、お腹が空いた、殺して、生きたい、そばに居て…1人にしないで
感覚がだんだんと消えて無くなりそうになる
そんなことないんだけど、心はずっとすり減って深い闇から抜け出せなくなる
涙がボロボロと溢れて床に落ちる
それに反射して見える自分の顔はとても醜い化け物だった
この世に住んでる人間だとは思えない

虚ろな目で食べ続ける
空腹は収まらない
どうしたらいいか分からない
恋という名の呪縛からは逃れられない
恋をした代償からは罪からは逃れることは出来ないから…離れられないたくない…一緒にいたいから
貴方が私を受け入れてしまったから
突き放してくれれば良かったのに
あのまま見放してさよならしてくれれば良かったのに、殺してくれたら良かったのに...
貴方はそれをしなかった、してくれなかった
抱きしめてくれたその腕をふりほどいてしまえばよかったのに…出来なかった

手を取ったのは彼女だ

貴方の言葉を受け取ったのは彼女だ

自分の気持ちを隠せなかったのは彼女だ

全部全部全部なにもかもが自分のせい

この世に生まれてしまった自分のせい

死ぬ勇気をもてなかった自分のせい

身の程知らずに愛を求めた自分のせい

せめてせめて…貴方を傷つけることを食べることをしたくないから…これで誤魔化そう




だってそれしかできないでしょ?




どれだけ貴方から化け物でないと言われても

どれだけ貴方から好きと言われても

頼ってと言われても…

やっぱり自分を自分で許せない

腹を空かせ

貴方をその目でみる




こんな自分が大嫌い




腕に足に入る刃はとても痛い痛くて耐えられないけど骨を折る時に嗚咽がまみれるけど食べないと収まらないから
骨をごきりと折る音も肉を切るときの不快な感覚も…自分が感じるだけでいいから
再生される時の気持ち悪い感覚も自分の罪の証だから
自分はいくら傷ついて苦しんだって構わないから
死んでもいいから
こんな醜い自分は見られたくないから
貴方の知らないところで静かに罪を償おう
……こんなこと知られたらきっと怒るのだろうか?…まさに生き地獄だね
けど…もう二度とあんな思いはした
くないから




ごめんなさい




好きになってごめんなさい

手を取ってしまってごめんなさい

嫌いになれなくてごめんなさい

さよならが出来なくてごめんなさい

お腹を空かせてごめんなさい

生まれてきてごめんなさい

息をしてごめんなさい

生きていてごめんなさい

死ねなくてごめんなさい

貴方にこの気持ちを抱かせてごめんなさい

それでもこの気持ちは嘘じゃないから

貴方を好きになったこの気持ちは紛れもない事実だから

好きだから

愛したいから

「アルジさん…好きになって…ごめんなさい…ごめんなさい…許して…ごめんなさい…ごめん…なさい…」

こんな醜く汚い彼女でも貴方は好いてくれるのだろうか?

貴方みたいな素敵な人にきっと彼女には相応しくない

だからどうか────────





どうかどうか…嫌って捨てて…そしたらきっと…何もかも諦めて…死ぬことができるから…


そう思いたいのに


やだ嫌わないで…一緒にいて…生きたい…生きたい…1人は嫌だ…愛して…愛させて…貴方のそばにいたい…





深い深い闇の中

光を手に入れたとて抜けられない闇の底

死んでしまいたいという思いも
生きたいという思いも
愛し愛されたいという思いも
愛されたくも愛したくもないという思いも
矛盾する全ての思いを抱えながら


そっとその瞳を閉じた






「ごめんなさい…」





涙をひとつ流し
そうひとつ言い残して
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柚子カレーさん (8zml5wu2)2024/4/24 09:36 (No.103493)削除
ズカズカと通りをぬけた銀髪──メルツが、とある工房の扉に手をかける。きちんと鍵をかけるやつだと思っていたが、その扉はすんなりと開いた。さて、これは困ったことだ。
中に入ってみれば、廊下に至るまで工具や作りかけの部品が散乱する。同じ楽器に使うものはまとめる、程度の規則性がやっとのめちゃくちゃな室内。さて、近年はもう少し整理されていたはずだ、と考えたあたりで、あの娘が生活するためか、と男は思い至る。
ではこれは元に戻っただけの事。悲しむべきことでは無いのだ。

「邪魔してるぜ狐」

開け放った扉の先には、探している狐の姿は無く。作りかけのオルゴールがあるだけ。珍しいこともあるものだ。あの狐が作るのはもっぱら自動演奏楽器の類で、オルゴールを作っているところなど数える程しか見た事がない。
円盤の上には、2匹の狐。ぜんまいを巻いてみれば、オルゴールの回転に合わせ狐がクルクルと追いかけ合う。あぁ、ほんとうに馬鹿だよお前。

刹那、ガン、という凄まじい音と共に扉が開け放たれる。

「何、人の家に入ってやがる」

振り返れば、探していた狐──狸狗狐。どこかへ出かけでもしていたのか、そう考える男の胸ぐらを掴み、壁に押し付ける狐。

「何しに来た、って聞いてんだよ」

くく、と男の喉がなる。口角は上がり、狐をせせら笑う。

「そのピアス。もう要らねェだろ。いつまでつけてやがる」

答えはなく、ギリギリと絞め上がる喉と鋭くなる狐の目。あまりにも愉快で、男はとうとう最後の答え合わせを口に出す。

「知ってるか、狐。その醜く悍ましい執着をこそ、人は愛と呼ぶんだぜ?」

その瞬間、狐の表情と力が抜ける。何を言われたのか理解できない、とでも言うような顔で崩れ落ち、男の顔をただ眺めている。

「テメェが気づかなかったから、あの娘は死んだのさ」

その言葉に、ようやく意味を理解したようで。狐の顔は、次いで絶望に染まる。

「わかっていて………わかっていて黙っていやがったな!!!」
「当たり前だろ。俺らみてェな他人を食い物にして生きてる人間に、幸福なんざ掴む権利があるものかよ」

激昂する狐に、男はせせら笑う。
悪人は淘汰されて然るべきで。そんなヤツらがまかり間違って生き残るなどあってはならない。ましてや幸福を掴むなど。人間どものくだらない勧善懲悪。善人は報われて、悪人には何かしらの報いがなければならない。自身を悪人の側だ、と自覚していながら、同時にそう信じてもいる。否。そう信じているからこそ悪人になってしまったのだ、その男は。
彼女のいない幸福などありえない。彼女のいない世界に意味は無い。だから。だからどうか早く。この悪人を、罰して欲しい。彼女のいる場所へ。
ではその横で。悪人がのうのうと生きているなど。幸福になろうとしているなど。幸福に気付こうとしているなど。許せるものだろうか?だって、悪人も幸福になれてしまうのなら。幸福を許されてしまうのなら。

「恨むなら俺じゃなくてテメェの日頃の行いってもんだぜ」

その瞬間、男の首先に煌めくものが迫って。メルツの体は霧散する。鉄扇ではなく。あぁ、お前。死んでしまったんだね。口を開けば嘘を並べ立て。大抵のこともあっけらかんと笑いながし。思ってもいないことも平然と言えるお前は、あの娘と共に死んでしまったんだね。

「死にてぇなら黙って殺されろ!テメェの自殺志願に、あの子を巻き込むな!」

その言葉を聞いた刹那。ゲラゲラとその霧が笑いだした。

「あの子!あの子だって!?お前が!?珍しいものと聞けば金勘定しか興味のないお前が!!随分な成長じゃねぇか、えェ?嬉しくって涙が出そうだ!」

ゲラゲラ。ケラケラ。笑いながらも男は察する。これが狐との最後の会話だ。恐らく、こいつはもう二度と俺にロールやバレルを作らせないし、商談も持ち込まない。数百年の付き合いも、狐が人間を愛した。たったそれだけの事で崩れてしまう。

「なァ狐。お前のその半端な優しさが何よりも。あの娘を幸せにできなかったんだぜ?」

──ねえメルツ。その半端な優しさが何よりも。私たちの誰一人として、幸せにしなかったのよ?

ギリギリと。殺してやらねばなるまい、殺さねばなるまい、とこちらを睨み、最早意味をなさぬと知りながら刀を振る狐に、男は声をかける。

「お前が悪人だったら良かったのに」

あぁ、あぁ!悲しいね!また友人が1人減る。彼は心底からそれを惜しいと思っている。狸狗狐と友人であり続けたかったと。心の底から。けれどきっとそれは叶わない。
真実の愛。両思いの魔法。ああ、でも。もしかして、それなら。俺の事を殺してくれるだろうか。俺の愛は、真実彼女のためだけのものだった、と証明してくれるだろうか。なァ狸狗狐。悲しいよ。人ならざるお前がそれを得て。俺は──

「さようなら、友人。もう二度と合わないことを願うよ」

愛を失ったお前が、俺みたいにならないように。それだけは祈っておいてやる。
悲しいことに。男の言葉の全てに嘘はない。けれど、嘘が常である友人には分からない。男が真実彼を心配していたことも、彼との付き合いを惜しいと思うことも。全て、何一つ。
実に薄情な友人じゃあないか。なあ。
霧は、狐を馬鹿にするように、或いは名残惜しむように包み、次いで窓から風に乗って流れ出ていった。

工房に残されたのは、抜き身の刀を手に、ただ呆然と立ち尽くす、狐が一匹。ただそれだけ。
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さん (8zf1pchi)2024/4/22 17:58 (No.103355)削除
生まれつき嫌われていた。

綺麗なブロンドの髪は父に似た。

美しいエメラルド色の瞳は母に似た。

それでも愛されなかった。

愛してくれたのは動物達だけ。

世話もされず放っておかれたクロリスの世話をしていた鳥達。

分からないながらも乳を与えた雌狼。

あやすために敢えておどけてみせた熊。

守りたいからこそ洞穴に隠した蝙蝠。

皆が皆、クロリスを愛していた。

皆揃えて口にする『キミは素敵な子だよ』と。

クロリスは幼い頃から動物達に育てられた。

最初に喋った言葉は動物の言葉。

到底人間には理解ができない。

動物のように唸るクロリスを見て誰もが気味悪がった。

動物達は焦って人間の言葉を教えた。

クロリスも人間の言葉を喋れるようになった。

だがやはり愛されなかった。

全く手をかけられていないクロリスは肋が見えるほど痩せていた。

いくら動物達が果実を渡したところでクロリスには足りない。

日に日に成長していくにも関わらず痩せていく。

どうにかしようと動物達も模索するがやはり太らない。

次第にクロリスは横たわったまま動くことが出来なくなった。

このままでは死んでしまうと焦っていた時、雌狼が動いた。

老ウサギを噛み殺し、器用に皮を剥いで残った肉を綺麗な川の水で洗い、小さな火種でそれを焼き始めた。

肉の焼けるいい匂いが漂い始めた頃、今までずっと動けずにいたクロリスが起き上がろうとした。

それを見て雌狼は小さく唸ってクロリスの動きを封じる。

クロリスも静かにまたその場に横たわる。

肉がよく焼けたのを確認すると冷ましてから幼いクロリスでも食べられる程の大きさに噛みちぎってからクロリスの口元へ運ぶ。

クロリスも素直に口を開けてその肉を受け入れた。

ゆっくりと何度も咀嚼して飲み込む。

雌狼は肉全てを小さく噛みちぎってクロリスの口の中に入っている肉が無くなるとすぐにまた口に入れた。

肉が全て無くなれば手先の器用なアライグマが大きな葉っぱを器に水を持ってきてクロリスに飲ませる。

クロリスはそれを受け入れて水も飲み終わるとヘラっと笑った。

笑ったクロリスを見て動物達も安堵する。

雌狼はその頭をクロリスに擦り付けて嬉しそうに愛でた。

それ以来、雌狼だけでなく様々な動物が老いた他の動物をクロリスの食料として殺しては肉を与えてくれた。

老いた動物達もクロリスの為ならば、と自らその命を差し出してくれた。

クロリスが人一倍食べ物に感謝をしているのはこのような幼少期の出来事が理由だった。

次第にクロリスは元気になっていき、痩せてはいたものの、段々と普通の子供のような体型になってきていた。

それを見て嬉しそうにする動物達。

楽しそうにはしゃいで森の中を駆け回るクロリスを見て皆が安堵していた。

1度は餓死しかけた子供が、今では無邪気に己の足で走り回っている。

これほどまで嬉しいことはないだろう。

その幸せも一瞬で崩れ落ちてしまうのだが。




クロリスが5歳の頃、その幸せは唐突に奪われてしまった。

どこからともなく放たれた矢が雌狼に何本も突き刺さったのだ。

まるで雨のように降り注ぐ矢の数々。

クロリスは雌狼の腹の下で何も分からないまま動物達の悲鳴を、雌狼の苦しそうな吐息を聞くことしか出来なかった。

「……まま…?」

小さく小さく、不安そうに呟かれたその言葉。

クロリスは言葉が喋れるようになってから雌狼のことを『まま』と呼ぶようになっていた。

生みの親より育ての親。

古くからある言葉だ。

クロリスもそうだった。

自分のことを愛してくれないような実の両親より、自分のことを心から愛し見守ってくれている動物達、特に実の子のように守り愛してくれている雌狼のことを母だと呼び慕っていた。

実の子がいるにも関わらず、その子供達と変わらない愛情で接してくれた雌狼。

クロリスとその子供達も実の兄弟のように仲が良かった。

その子供達が『母さんっ!』と悲痛な叫び声をあげているのが聞こえる。

雌狼は子供達の言葉には反応せずクロリスに普段のような優しい声色で語りかけた。




___クロリス、貴方はとても素敵な子よ。
貴方は例え人に好かれなかったとしても私達は貴方が大好きよ。
この先の未来、きっと貴方を嫌いだと言う人も沢山いるでしょう。
でもそんな時は私達のことを思い出して?私達はいつでも貴方の味方よ。
男の子の貴方も、女の子の貴女も、みんな大好きなの。
可愛い顔で笑って、守りたくなるような顔で泣いて、愛くるしい顔で驚いて、優しい顔で怒る貴方が大好きなの。
だから絶望なんてしちゃダメよ。
復讐なんて考えちゃダメよ。
死にたいなんて考えちゃダメよ。
貴方は生きるの。
生きているべきなの。
貴方が存在するだけで救われる命があるの。
…それに、あの子達が貴方のそばに居る。
独りじゃないわ。
私だっていつでもどこでも見守っているから。
どうか、幸せに生きるのよ。




その言葉を最後に雌狼は動かなくなってしまった。

いつの間にか矢の雨は止み、クロリスとクロリスを押し潰さないように横たわった雌狼の遺体の周りに動物達が集まっていた。

雌狼を慕っていた皆がすすり泣き、子供達は大声で泣いてもう動かない母親に縋った。

クロリスは全てを理解すると子供達と同じように大声で泣きながら縋った。

食事も取らず段々と冷えていく遺体に縋り付いて泣いた。

動物達が引き剥がそうとするもクロリスは頑なに動かない。

『クロリス、母さんを埋葬しよう』
『これ以上母さんをこの場に置いておくのは可哀想だよ』

兄弟のような子供達の言葉でようやくクロリスは遺体から離れた。

動物達総出で、普通の個体よりかなり体格のいい雌狼の遺体を運ぶ。

目指すは大きな桜の木がある森の中のオアシス。

皆がその場所を好いており、もちろんクロリスも、雌狼も大好きな場所だった。

桜の木の下へ辿り着けば穴掘りが得意な動物達が急いで穴を掘る。

遺体が埋まるぐらいの深さと広さの穴が出来上がるとそこに丁寧に遺体を埋めていく。

みんなで丁寧に、今までの感謝も込めて土をかけていく。

クロリスも子供達もまた泣きながら必死に土をかけていた。

その光景を見つめる人影が。

サラサラで綺麗な金髪のボブヘアに美しい瞳の少年。

手には不思議な柄のぬいぐるみ程の大きさの卵を大事そうに持っている。

遺体を埋め終わり、再び泣きじゃくってしまったクロリスの前へと突き進んでいく。

動物達もそれに気付いて威嚇するが、威圧感に気圧されてただ少年を見ることしか出来ない。

少年はクロリスのすぐ後ろまで行くと優しく声をかけた。

「…どうしたの?」

クロリスが泣きながら後ろを振り返れば優しそうな顔をしている少年が。

「まま、しんじゃった」

しゃくりあげながらたどたどしく伝えるクロリスに少年は眉を八の字に下げて悲しそうな顔をした。

「そっ…か…。ママのことは好き?」

優しい声色のままクロリスに問いかける少年。

その顔はどこまでも優しく、まるでクロリスを見つめる雌狼のような、母のような顔だった。

「…うん、すき、だいすきだよぉ」

雌狼の優しさと愛情を思い出したのかクロリスは再び泣き出してしまう。

それを見て少年はしゃがみこみ、腹と足の間に卵を置くと優しくクロリスの頭を撫でた。

「そっかぁ。ママも、キミみたいに優しい子に大好きだ、って言われてきっと嬉しいだろうなぁ」

優しく、それでいて羨ましそうな声色で語る少年。

撫でる手が優しくて、涙が止まらないクロリス。

最初は警戒していた動物達も2人のやり取りにまた涙ぐんでいた。

「…代わりになるとは思わないんだけどさ、もし良かったらこの子の世話、してみない?」

少年は撫でていた手を離すと腹と足の間に置いていた卵を大事そうに抱いて見せた。

クロリスもその卵を泣きじゃくりながら見つめる。

不思議な柄の、鳥の卵にしては大きすぎるその卵。

少年は我が子を見るような優しい瞳で卵を見ていた。

「いつ孵化するのかも分からないけど、少しでもキミの気持ちが安らぐなら、だけど。どう?」

何かに意識を集中させることで辛い現実から目を逸らさせる。

今のクロリスにはそれが最適なのでは、と少年は判断した。

もう既に2万年程動く気配すら見せていないこの卵。

もしかしたら既に死んでしまっているのかもしれない。

だがそれでも少年は信じたかった。

生きていると、いずれ孵化すると。

けれど、待てど暮らせど卵にはなんの予兆も訪れない。

もし、もしも、動物に好かれているクロリスが孵化させられると言うのであれば"我が子の誕生"をクロリスに任せてみてもいいのではないかと、そう思った。

少年が差し出した卵を見て、涙が一旦止まる。

おずおずと受け取るために手を伸ばし、卵にクロリスの指が触れた時。

「っ…!」

突然卵が揺れた。

それは卵の存在証明、生きているとの証。

少年は泣きそうなそれでいて嬉しそうな顔をする。

「…やっぱり、この子もキミの傍にいたいって」

卵が動いたことに驚いて固まるクロリスにそう語る少年の顔はどこか辛そうだった。

クロリスの腕に卵を半ば無理矢理抱かせると少年は立ち上がる。

「その子のこと、よろしくね」

作ったような、苦しそうな笑顔を見せて少年はスタスタと歩いていってしまう。

クロリスも卵を抱きながら立ち上がり、少年の背を見つめる。

だがその間も卵は揺れ続けていた。

動物達は今度は少年の心配をしていた。

何故か、それは少年が涙を流していたからだ。

約2万年もなんの動きすら見せなかったあの卵が、動物に好かれているクロリスに触れられた瞬間まるで喜ぶかのように揺れて見せた。

まるで、実の親ではなくクロリスの傍がいい、と言わんばかりに。

少年は親として悲しかった。

自分では愛してあげられないのかと、頼りないのかと。

だがそんな少年を慰めるかのような言葉が背後から届いた。

「だいじにするからっ!だから、うまれたら、あいにきて!」

クロリスの声だった。

泣きじゃくっていたせいでまだ涙声ではあったがそれでも芯の強い、真っ直ぐな言葉。

少年は立ち止まると涙を拭いてクルッと振り返る。

「もちろん、可愛がってあげてね」

笑顔を見せてやればクロリスは嬉しそうに笑って卵を大事そうに抱き抱えた。

それを見て少年はその場を後にする。

もしあの子が、あの子達が幸せになれるのであれば仕方がない、と親として覚悟を決めたのだった。




それ以来、クロリスは卵を孵化させるべく奮闘した。

今にでも孵化しそうだった卵は中々進展を見せない。

クロリスが触れれば活発に動くものの、置いてしまえばまるで置物のようになる。

卵生である鳥類達から孵化の仕方を教わり、とりあえず暖めてみることにした。

常に抱いて、傍から離れないように。

渡されてから約6年。

やっとその時は訪れた。

ある日突然殻にヒビが入る。

動物達も、クロリスもまた固唾を呑んで見守る。

ヒビから小さな殻の破片がポロポロと落ちていき、小さな破片が段々大きくなっていく。

そうしているうちに、殻に穴が空いてそこから産毛の生えた小さな物珍しい黄色の龍がひょっこりと顔を出して小さな声で鳴いた。

クロリスが殻の中から抱きあげれば嬉しそうに何度も鳴いてクロリスに頭を擦り付けて甘える小さな龍。

その時になってようやくクロリスは雌狼の気持ちと、この卵を託した少年の気持ちを理解した。

愛し愛されるということは、こんなにも胸が暖かくなるのか、と。

クロリスは雌狼が亡くなってから初めて泣いていた。

悲しいわけじゃない。

嬉しかった、愛おしかった。

この龍の誕生が、小さな声で体で、必死に鳴いて親に甘える龍が愛おしくて堪らなかった。




だが悲劇は再び訪れた。

その1年後、やっと生まれた小さな龍は1歳になる前に死んでしまった。

他の誰でもない、兄の手によって殺されたのだ。

兄とクロリスは異母兄弟。

母親が違うものの、ずっと一人っ子だった兄はクロリスが可愛くて仕方がないようで不器用ながらも気にかけていたり、クロリスもそんな兄を両親よりはマシだ、と思いある程度の交流はしていた。

だがやはり、兄も変わらなかった。

殺された龍の亡骸を抱き抱えて泣きじゃくるクロリスを慰めようとする兄の手を払い除けて兄を睨んだ。

初めてクロリスに睨まれた兄は酷く狼狽えてどうしていいのか分からないようだった。

そんな2人のやり取りを見ていた使用人が両親に告げ、緊急の家族会議が行われることになった。

クロリスはタオルケットで包んだ龍の亡骸を抱きしめたまま椅子に座って俯いていた。

両親はクロリスに興味はないものの、クロリスのすることはある程度黙認していた。

もちろん龍のことも知っており、母親はともかく父親は龍のことを可愛がっていた。

そのため、龍を殺した兄への怒りとその兄を庇う母親に怒鳴っていた。

だが父親に意見を促され言葉を発した兄の言葉にクロリスは絶望し、家族に期待することをやめてしまった。

兄の言葉にクロリスは立ち上がり泣きながら兄を罵倒する。

罵倒の言葉は止まらず父親が使用人にクロリスを部屋へ戻すように告げ、クロリスは使用人にすら触れられたくなかったのか触れられそうになると手を払い除けて、部屋まで走り去ってしまった。

部屋に戻るとベッドの上で亡骸を抱き抱えたまま蹲って泣くクロリス。

そんなクロリスを心配するような鳴き声を出すかつての子供達で現在の兄弟達。

「…ノワ、ブロンシュ、ままのとこ行こう」

涙を流しながら兄弟達に一言声をかけると龍を抱き上げたまま3階の部屋の窓から裸足で飛び降りる。

兄弟達もそれに続いて窓から飛び降りた。

綺麗な着地をすると、怪我もないのかスタスタと歩き出してかつて母を埋めた桜の木の下へ向かう。

裸足で、しかも明らかに泣いたような顔をしているクロリスを見て動物達も心配したがクロリス本人が『平気だ』と告げるとそれ以上何かを言うことは出来ない。

桜の木の下に辿り着けば母の墓の横に穴を掘る。

穴掘りが得意な動物達も手伝ってくれてすぐに丁度いい深さと広さの穴が掘られた。

そこにタオルケットを外した龍の亡骸を横たわらせる。

まるで眠っているかのような綺麗な顔。

少しヤンチャだっただけだった。

父親も『ここの家具なら』と許してくれていた部屋だった。

龍も賢く、その部屋の物は絶対に燃やさなかった。

それでも兄は龍を殺した。

『家具を燃やすから』と忌み嫌った。

許せなかったが兄に勝てるほどの力を持っていない。

復讐しようにも力が無ければ負けるだけ。

『生きろ』と言われたから。

死ぬ訳にはいかない。

人間は嫌いだ、大嫌いだ。

自分勝手で我儘な人間より、素直で優しい動物達の方が好き。

人間なんてさっさと居なくなればいいのに。




クロリスは絶望こそしなかった、復讐しようとも思わなかった、死にたいだなんて思わなかった。

ただ、人間を、人間を生かし続けるこの世界を嫌ってしまった。​
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芝生さん (8zcpvqfm)2024/4/21 23:10 (No.103284)削除
ラマラ
『夜空だけが』

上の者というものに、いつの間にか憧れていた。
父さんが死んで、母さんが死んで、俺とシエロだけが残った時から、きっと…。
3つ年下のシエロの手を握る。
壊さないように愛するように優しく、手放さないようにどこにも無くさないように強く。
……1人に、しないで…
幼いか細い震えた声が、闇に溶けて消えていく。

強くなりたいと何度も願った。
精神的強さが、物理的強さが、頭脳的強さが。
どれでもいい、なんでもいい、自分になにか長けた才能があるならと、がむしゃらに。
俺は、弱い。
目の前で散っていく命を見ているだけ。
苦しむ誰がを見て見ぬふりして去っていくだけ。
だって、だって俺は、そういうことを出来るに値する者じゃないから。
そこから生まれる明るい展開や未来があったとしても、また無くしてしまうのが怖かったから。
あぁ、まただ…胸の奥がぎゅってする。目と鼻の奥がツ-ンとする。
泣きたいんだ、あの頃からずっと。
でも、どうして…。

不思議な男に拾われてから、生活が一変した。
毎日の修行や鍛錬は俺にとって正直過酷だった。
自分はただの人間で、アイツみたいなずば抜けた強さや、アイツみたいな個性なんて無くて。
苦しい、嫌、辞めたいなんて思う度に、口角を上げることにした。
俺は余裕だ、まだ行ける、なぁ、行けるだろ、立てよ、立てよっ!!
体が限界を迎えていたって関係ない。
動けよと信号を体に送り続ける。
いつまで経っても弱いままの俺に、笑顔を作るということは1つの救いだった。
暗い感情を押し殺して、笑い続ければ…いつかできるって信じれる、勇気を貰える気がしたんだ。
無理?してないしてない……体がそう感じてるだけ。
俺は、行けるんだよ。
強くならなくちゃいけないんだよ。
笑顔で、……ねぇ、笑って。
泣きたいなんて思わないで。
俺は強い子で、優しくて、いつも笑顔で。
誰にでも手をさしのべられるような、お母さんが俺に話してくれた、素敵な人間になりたくて…──

無くしたくない、無くしたくない…。
連なる思いに蓋をする。
泣きたい、苦しい、もう辞めたい。
……なんで俺って生まれてきたんだろう。
こんな思いするなら生まれたくなかった。


「ねぇ、ラマラ。…貴方は優しい子になるの。困っている子がいたら、真っ先に助けてあげられるような。優しい優しい…お兄ちゃんになるのよ」
……ねぇ、お母さん…。
俺自身ないよ。
優しいって、一体何…?
自分が苦しくても、他の人に優しくするって正解?
俺の苦しいは…どこにやればいい…?

星と月だけが俺を見る。
笑顔の裏の、自分の弱いところ。
頬を伝う涙を夜風が冷たくする。
…一人ぼっちなんだ、あの頃からずっと…。
俺には、何が出来る──
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緑茶さん (8z88g5i0)2024/4/21 11:00 (No.103217)削除
【Avis inclusa qui nescit vivere】


大丈夫


ボクは大丈夫だから


痛くない


大丈夫


『ほんとうに?』


あの人みたいになるためだから


『なれるの?』


なったらきっと愛してもらえるから


『もうあのひとたちは死んだのに?』


きっとみんな、もうボクを捨てないから


『そんなのやくそくされてないのに?』


みんな、アンジュを愛してくれるから


『ボクじしんがアンジュを愛してないのに?』


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

片腕が失われ血が流れる腕、


血まみれの服


人のためという結晶


否、血漿か


だけどアンジュは自分に暗示をかける


これは人のためなのだと


賢者のような人になるために必要なことだと


そうとは限らないと言うのに


そんな考えはまるで思い浮かばないかのように


いや、きっと他の考えなんて思い浮かんで欲しくもないのだろう


だってもし、今ここで今までのやり方を…生き方を否定しまえば


それはアンジュ・ラオムを否定することに繋がってしまう


それは嫌なのだ


だって、もうそれ以外の生き方を知らない


認めてもらうには……愛してもらうにはこれしかない


それに、アンジュ自身心から賢者を慕っている


その心がある限り、きっとアンジュは賢者のような人になると言う夢を捨てきれないのだろう


見つけてしまったから


助けられてしまったから


アンジュと恋人の愛の城に、まるで不幸の足跡のように血が滴る


アンジュの心の暗闇を表すように


今までのアンジュの人生の悲惨さを形容するように


自分の寝室まで辿り着きたい


(あの子には知られたくない)


(こんな傷、治せる)


(治せるんだから)


(早く治さないと…)


(あの子に見つかってしまう前に)


そう思うのに、体は言うことを聞いてくれない


何をしようにも、全く力が入らないのだ


長く広い廊下の途中で、倒れ込んでしまう


部屋に行かないと


信号のようにそればかりが脳内に鳴り響く


その時、喉を通る痛み


不愉快さ


それが通り、口から血が吐き出されてしまった


いわゆる吐血だ


「ぉ゛ぇ゚ェ“ッ…」


紅い紅い血


何度目だろうか


自分の惨めさ、弱さを思い知るのは


こんなんだから


こんなだからあの人たちに愛されなかったのに!!!!!


愛されたかったのに!!!!!!!!


今更悔やんだってもう遅い


あの人たちはもう居ない


目の前で殺されたじゃないか


思い出す鮮血と死体


叫び声


思い出すな


恐怖なんて感じるな


次に追憶されるのは、今まで言われてきた言葉の数々


『アンタなんて産まなければ良かった』


『ラオム家の恥め』


『月の忌み子が』


『本当に親友だと思ってたの?』


『お前なんて賢者みたいにはなれないよ』


『君は誰にも必要とされてない、愛されてないよ』


いやだ


そんなこと


そんなのは


それだけは嫌だ


だってそれは


それは


「ボクはッ…ボクは…いままで…なんのために…がまんしてきたのッ…?したぃ゛、こともッ…言いたいこともッ…髪も、ぜんぶッ…。……ボクも……みんなみたいに……愛されたいッ、愛されたかったのに……。」


そんなことを嘆いても、何も変わらない。


アンジュ・ラオムは愛されなかった


何をしても愛されない


それが変わることはない


希望なんて産まれた時から無かった


唯一の希望は、後に世界を救った3人の中の1人だった


生きたくも、死にたくもない


そんな中途半端な心を引きずり、そして我慢を続けた


次第に心は壊れてしまった


笑っているのに泣いてしまう


味が分からない


時々、全てがどうでもよく思えてしまう


隠さないと


こんなのはあの人じゃないから


でも

もう
「つか、れ、た…な…。」


そう言って気を失ってしまった


その意識の最後にうわ言のように呟いた言葉はあの子の名前


「り、いふぇ…く、ん…」


片腕だけの腕でなにかに伸ばそうとした


だがそれは伸びることなく暗闇へと堕ちて行った
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蒼弥さん (900sekxf)2024/4/18 10:33 (No.102872)削除
鬼人の嘆き



何故俺は、死ねない。

どうして死ねない。

どうして死なせてくれない。

ずっと、ずっと死のうとして、やっているのに。





剣で何度も心臓を刺しても

銃で頭を撃っても

何度も壁に頭をうちつけても

首を吊っても

30階以上の建物から飛び降りても

知らない誰かの家ごと自分を燃やしても

海で溺死しても

落雷に打たれても

毒死しようとしても

首を斬り落としても

心臓を取り除いても



死ねないんだ。

どうすれば死ねる。そんな事を思いながら、俺は………俺を"忌み子"のように蔑む民間人共を闇討ちする。

その一人目を、殺しに行こうとしていた。…夜闇、誰もいない………殺しやすい環境。そんな中で俺は、人を殺す。だが、最初にして…失敗してしまったんだ。

「きゃーーー!!人殺し!!!来ないで!!!誰かぁ!!!!!」

この女の第六感が、危ないと告げたから?死ぬことへの拒絶?何故?分からない、分からないまま、俺はその女の首を折ろうとした。





「させねえってんだよアンポンタンッ!」

俺と女の間に入り込む一つの人影。

そいつは、俺が今凄く憎むぐらいに大っ嫌いな人間だった。

「───スヴァイレ、流石に正義を謳う組織にいながら、民間人殺そうとすんのは良くねえぜ。」

黒川 蒼影。

「…邪魔だ、黒川。俺は、そいつを殺さないと…いけないんだッ!!!」

鞘からいつも使うあの二刀流の刀を抜き、そして片方の刀を持って振り回す。

「…………それが良くないって言ってんだろ。そこまでする必要はないだろ。」

黒き刀を抜刀しながら、俺にそう言いかけてきた。

「黙れ、黙れ…黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れッ、黙れッッッッッッ!!!!!!!!!テメェに何がわかるってんだよ!!!!!!」

怒号と共に放たれる音圧の咆哮。前にいる蒼影と、そこにいる女の鼓膜を破壊せんと放った。思惑通り、女は鼓膜を破壊することが出来たようで、耳から血が流れていた。痛そうにしているが、どうでもいい。あとは、何かしらで殺す。

「戦闘経験者にするには甘いね。…さて、かかってこい。お前には殺らせないぞ。」

「黙れ…テメェなんざ細切れにして、その女の息の根を止めるッ………!」

そう言って俺は、一気に踏み込み女の方へと刀を振り回さんと向かったが、前に立ちはだかるは黒川…俺は、壊刀による怒涛且つ無数の連撃を、繰り出した。常人で捌けるかどうかが怪しい程の、な。

「(はーん、そういう感じか。なら…一太刀で、三つだな。)」

無論それに抵抗するべく黒川は刀を振り回す。だが、俺はそれを見ておかしなことに気づく。………数的に、俺の方が圧倒的に勝っていると言うのに、奴に傷一つ付きゃしない。

それどころか、俺の肉が削られるような感覚。
なんで俺が負けている?たった一太刀の刀のコイツに、どうしてだッ!!!!

「なんで!!!お前は!!お前はそんなに強いんだよ!!!俺みたいな化け物の強さしやがって!!!!なんでなんだよ!!!!!!」

「努力だよバカタレ。最初からそんな強くなかったんだよ。血滲ませながら沢山努力してきてんだよ。」

努力

嗚呼、凄く憎い言葉だ。

何が努力したから、だ。ふざけるな。俺だって努力したかった。努力したかったのに、結局努力も出来ず訳の分からぬままこんなクソみてえな力を与えられた!!!なんなんだってんだよ、このクソッタレな身体はよォ!!!!

「なんでテメェじゃねえんだッッ!!!!俺だって!!!!誰かに褒められたり、慕われたかったのにィ!!!!!」

鞘から金砕棒を取り出し、そして地面に強く叩き付けた。その破片が、銃弾となり、女と黒川にそれぞれ半分ずつ襲いかからせる。

「……黒川流。"剣閃一殺"」

知らぬ間に納刀したと思えば、いきなり抜刀して真一文字に横薙ぎした。だが、俺には見えていた。その真一文字の斬撃以外にも舞う、三日月型の無数の斬撃を。それらが、銃弾の全てを斬り落としたのを。

「ッ…あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ッッ!!!!」

咆哮をしながら、俺は金砕棒と壊刀の三刀流で、蒼影に攻撃し始める。
もっと速く、もっと威力の強い攻撃を、全てをぶつけてでもッ…!!!

「…悲しいな、お前という人間は。」

「黙れッ!!分かったようなヅラしてんじゃねえぞッ!!何もわかんねぇくせに!!!努力が出来て、皆に慕われて、ちゃんと強くて、嫌われないようなテメェにィッ!!何が分かるってんだァァァァッ!!!」

「………それが悲しいっつってんだよ、馬鹿野郎。」

全ての斬撃と打撃を一太刀だけで防ぎきる奴は、そう言った。そして、間のない連撃に無理矢理間を作るように片足を大きく1歩踏み込み、より接近して…

「黒川流、"星殺斬・月裂"。」

五芒星を描くように刀を高速で振るう技。見えたとて、対応出来ない。刀の他にも、三日月の斬撃が一太刀一太刀繰り出される所を縫うように襲いかかり、更に俺の肉体を斬りかかってくるのだ。

そうして、俺の身体は無惨に無数に斬り付けられ、その後…黒川は俺の横腹に思いっきり回し蹴りで蹴っ飛ばし、俺は壁にとても強く叩きつけられた。

何故、何故こんな奴に負けてしまったんだろう。

何故、こんなに圧倒されてしまった?

分からない、分からなかった。

…俺は、やはり………



「…信念が無さすぎる。テメェの場合、早く死にたいからって、そんな本気で戦えてねえだろ。」

「……………。」

「そんなんだから、出せる力も出し切れず、同格って言われる俺にも今あっけなく負けちまった。…ま、運というのもあるし、急いでたからなんだけどな。…なんでもいいけどさ、少しは人と話す努力をしてみるのもいいんじゃねえの。するかどうかはお前自身なんだけどな。」



黒川は、俺にそう言って、女を担いでどこかへ去った。きっと、医療班の所に運んで行ったのだろう。

嗚呼、俺は…弱いんだな、そう言った…面では。

でも、仕方ねえじゃねえか。

皆に、誰かに、褒められたかった。

沢山楽しく話したかった。

沢山何かをして、楽しいと思えるように生きたかった。

努力して、強くなってみたかった。

"生きる"活力になることが欲しかったのに。

………俺は、もうこの世界に必要ないんだな、やっぱり

早く死にたい

死にたい

死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい



神よ、どうして、俺を生かそうとする

早く、死なせてくれ。

俺は、モブみたいな存在だったはずなのに、それすら…その存在価値すら、奪ったんだからよ…。

夜闇の路地で、壁に叩きつけられたまま、血塗れで………早く、1秒でも早く死ねるように願う。




「………はあ。どうしたらいいかなぁ、アイツ。」

「そないに心配なん?」

「あたぼうよ。あまりにも死にたがり過ぎるからさぁ。」

「んまぁ、気持ちは分からんでもないんやけどな…はいっ!お耳治したで!聞こえる?大丈夫?」

「は、はい…」

「ん!ならとりあえず大丈夫そうやね!ほな暫くしたら帰ってええよ!」

………

どうやったら、人を救えるかな。

そんな事を、ぐるぐると考えさせる。

…暫くは、ちょっとあいつの事を見守るか。

下手に死なれるのは、困るからな。
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ヘルさん (90xdn9d1)2024/4/17 19:48 (No.102778)削除
【月下に潜む猫の女王の話】



「私は呪いの子じゃない!!!ただのただの!!女性だ!!!!」


19年前少し家の者には及ばない紫髪の女児が生まれた

奥方はとても悲しがっていた。そして怒り狂っていた

夜長の性を受けた女は濃い紫色の髪の毛を持っていた

その女児の名前は”夕”。紫の名前が付いていない

奥方のお名前は紫紺。夜長紫紺様。綺麗な濃い紫色をしておられる

使用人100名のうち39人。

夜長に関係する使用人以外の者32名計71名の者

夕の事を「呪いの子」と言い始めた。

兄は怒り狂った。71名の1人。

レナード家の嫡男を殺そうとしたのだ。だが、腕を負傷した。

結局ダメだった。

夕が10の頃。夕は呪いの子と言われてるのに気づいた。

泣きじゃくった。1週間部屋から出てこなかった




ある日

背中を怪我して帰ってきた時があった。

深く。気色の悪い爪跡のような傷。

さらに数日後。また傷が増えた

浅く、ナイフで切ったような傷。母親がやったのだ。







今になっても、彼女は苦しんでいる。 





———-余談だが、「呪いの子」と言い始めたのは。ナチュレ・レナードである。
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さん (8z9vrvz5)2024/4/11 00:32 (No.101990)削除
〖Reverse〗


「ヴ…ッお゙ェ゙ォ…」


何度目かも分からない嘔吐


あまりの吐き気に虫唾が走る。


さっき食べた物が、全て吐き出されていく


もう胃の中は空っぽな筈なのに、


まだ反射運動で胃液も吐き出されていく。


気持ち悪い


食事なんてしたくなかったのに


でも、食事をしないと秘密がバレてしまう


それは避けないと、いけないのに


苦しい、気持ち悪い


一人の部屋。


溢れそうになる涙と汗は抑えることが出来ず永遠と流れ続ける。


「オ゙ぅ゙…ッ…ア゙…」


吐血、吐き過ぎた。


震える手で治癒魔法を掛ける。


疲れが溜まっていく、


境界線が分からなくなって、今にも意識を飛ばしてしまいそうだ


震える手足で立ち上がれば、部屋に鍵を掛ける。


誰も入ってこれなくなれば、寝室に移動しようとした


……少し遅かったようだ。


体が横に倒れ、視点が低くなる。


フェードアウトしていく視界を、自ら閉ざせば眠るように気絶した









起きればまた元通り、それを望みながら
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柚子カレーさん (8zml5wu2)2024/4/7 06:19 (No.101559)削除
「これ」

銀髪の男が、金髪の男の前に紙袋を置く。
金髪の男──狸狗狐は、深く深くため息をついた。

「………嫌だ」
「伝手はあるだろ」
「あるがな。お前、生きてる状態でやることじゃねぇぞ」
「生きてるからやるんだろうが」
「………」

閉口する狸狗狐。そう言えばこれはあの男の息子なのだ。執着の度合いが違う。執着、などというのも馬鹿らしい。ましてやこいつに至っては、両思いときた。相手が勝手に自分のものになった時ですら随分な執着を見せる血筋だ。それが双方向かみ合う、となれば。

「気持ち悪いやつだな」

猫を被っていないコイツは、まるきりあの男と会話しているようで。傲岸不遜、上から目線でこちらのことなど考えず。断る権利などはなから用意せずに会話を始める。会話を始めた段階で、既に着地点を決めている。いっそ見事なまでの自己中心性。そのくせそこに着地せずともそれはそれで構わない、程度にしか思っていないのだ。その思考と感情のアンバランスが、あまりにも気持ち悪い。

その執着も気持ち悪いし、あまりにもあいつに似てるのも気持ち悪いし、何もかもが気持ち悪い。

「デザインは?」
「石ひとつの固定でいい。あぁ、出来れば角はとって丸くしてくれ」
「はぁ?やけにシンプルだな」
「ここに付ける」

ベ、と差し出された舌にある、穴。うわ。最悪。本当に全て最悪。

「はぁ……ダイヤでいいのか」
「ルビーにできるだろ」

ああもう会話したくない。そのネックレスはどうしたのだ、と聞かれて、自分で加工した、と答えたのがもう運の尽きだ。簡単なピアスを作って欲しい、と言われ、金はとるぞ、に是と答えられたから請け負ってしまった。
あまり外に頼みにくいものだから、と言う言葉に嫌な予感を抱いたときにはもう遅い。頼まれたのは、髪を宝石にするもの。それ遺骨とか遺髪とかでやるんだよ。知ってる?外に頼みにくい自覚あるなら俺にも頼むなよ。

「重い男は嫌われるぞ?」
「あの子が?俺を?ねェな」

うわ断言するな腹立つから。そういうところだ。会うのはオススメしない、と言ったのは俺だが。ここまで来るとむしろ会わせてみたくなる。というかあの朱雀殿がこれの本性知ってて付き合ってんのかが気になってくる。え?知ってて付き合ってるとしたら?いや……趣味悪いんでちょっと……関わりたくない……

──────────

「出来たぞうさ坊」
「わぁ。ありがとぉ。ふふ、きれいだねぇ」

お前その変わり身なんなんだよ。を、この場で言うと多分後で面倒なことになるのを狐は知っている。

「ゲージは?」
「20」
「んん……じゃあつけてないと簡単にふさがっちゃうね……」

穴は小さいほど塞がりやすい。20なんか最小サイズだ。普通は14-18を使う。ただ、舌は神経が通っている場所だし、喋る度に使う場所だからその方がいいだろうと判断した。俺が。勝手に。まあ間違えてはなさそうなのでいいだろう。

「ふふ、ありがとうね、狸狗狐くん」

……本当にロクでもない執着。その末路はなんだ。人間は狂い、蛇は身を投げた。ではうさぎは?

「お代だけちゃんと振り込んでおいてくれ。じゃあな」

「またねぇ」

ひらり、と振られたて。細められた、その目が笑っていないことくらい。疎い狐だって気づけるさ。
柚子カレーさん (8zml5wu2)2024/4/10 21:50削除
【イェンス私室の引き出しにて】

嫌だな、と思う。君がこれを読むことは、嫌だなぁ、と思うけど。君が天寿をまっとうするなら、多分先に死ぬのは僕だろうから、やっぱりこれを書いておかない訳にはいかないだろう。
だから書いているのだけど、とりあえずまず1つ目。どうか僕の後を追うような真似はしないで欲しい。君が僕を覚えて、僕を思い出して生きてくれるなら、僕はずっと君の隣にいられるから。君のその翼で、僕を連れて色んなところに行って欲しい。一緒に色んなものを見たいと思う。だから、僕の後を追う様なことはしないで欲しい。
君の舌に預けたピアス。あれはね、僕の髪から出来ている。ああいう石はそう簡単には割れないから。優しい君なら、僕を一人で残すような事はしないと信じている。
2つ目。君のような一途な小鳥には難しいかもしれないけれど、いい人を見つけて早く幸せになって欲しい。君にとって最優の男は僕でありたいから、僕を忘れろ、とは言わないけど。僕よりいい人、とも言えないけど。でも、いい人を見つけて、幸せになって欲しい。君が幸せでない時間が短くあって欲しいと祈っている。
まあ、だから何が言いたいかと言えば、どうか幸福に生きて欲しい。それだけの事だ。僕は君に生きていて欲しいし、その道行が出来うる限り幸福でいて欲しいのだ。
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さん (8z9vrvz5)2024/3/29 13:55 (No.100449)削除
〖Корэдэсаиго〗


痛い、痛い、痛い、痛イ、イタイ


苦しい、助けて


お父さん、お母さん、お兄ちゃん


どこ、どこにいるの



痛む体に鞭を打ち、朧気な意識で周りを見渡した。
足片方の足がやたらと痛みを主張してくる、少し動いただけでも激痛が体に走る、きっと骨折しているのだろう。
頭を強く打った、前が見えない、ぼやけて見える。



「お父さ…ん…」



父であったであろうものに、手を伸ばす。
触れた肌は、酷く、冷たかった。
父に触れた己の手を見れば、その手は赤く染まっていた。
完全に目覚めきった意識。
体の痛みなんて忘れて、必死に父親の体を揺さぶって言葉を叫んだ。



「お父さん…!!!ねぇ…!!!お父さん…!!!」



どれだけ体を揺さぶって、起こそうとしても父が起きることは無くて、溢れそうになる涙を抑えた。
母と兄の姿も、血に染まっていて、動くことなんて無くて。
孤独な場所で1人、号哭を叫んだ。



❀。.............................。❀



「ッ…!ハァ…ハァ…夢…?」



……悪い夢だ


あの感覚は、今でも忘れられない。


寝ている間に汗をかいていたようで、汗が肌から落ちる感覚が気持ち悪い。



あのことは、ボクのせいじゃない。


誰のせいでもない、そう、そうなんだ。



『本当にそうだと思うのか?』


「は?誰…ッ!!!」



目の前にいたのは、父親だった。
正確に言えば、父親の幻覚だ。



『お前のせいで、俺が死んだんだ。母さんも、▇▇▇▇だって、お前のせいで死んだ。』


「違うッ!!!お父さんはそんなこと…!!!」


『お前のこと、昔っから大嫌いだったよ。』


『何で生きてんだ、お前だけが。』


「違う、違う違う違う…!!!」



お父さんが心中をしようとしたんだ。
でもお父さんなりにも理由があって、お父さんがそんなこと言うはずないんだ。
ボクは悪くない、そう思いたかった。



❀。.............................。❀



「………………」



無心で、自分の腕や足を切り続ける。


ストレスを発散するにはこの方法しか無いから。


今日の幻覚も散々だった。


幻覚って分かっているのに、それを現実として見てしまう自分が心底嫌いだ。


死にたいと願って、もう何年も死んじゃいない。


死ぬのが怖いから。



「これでもう、最後に…」



一度自傷をしてしまったら、止められることなんてそう無いのに。


これで最後、そんな戯言を残して。





今日もまた、自分を傷つける。
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緑茶さん (8z88g5i0)2024/3/28 23:15 (No.100386)削除
【υπομονή】


弱さを見せるな


甘えるな


休むな


守れ


民を


お姉ちゃんを。


苦しくない。


これが仕事だから。


やらないといけない事だから


私がやらないといけないから


他に居ない


私しか居ないから


私が守らないといけないから


お姉ちゃんには私しか居ないから















違う。


私だ


私にはお姉ちゃんしか居ない


お姉ちゃんを失ったら…


お姉ちゃんが居なくなったら…


私には何も残らない


誰も居ない


いなくなる


私には誰も居ない


何も無い


だから私は守るしかない


あの時守れなかった私が、できることはそれしかないから


でもね


本当は私だってみんなみたいに普通の生活を送りたい


普通に友達と遊びたい


普通に誰かに甘えたい


でもね


それを私が一番許せない


お姉ちゃんは不幸になったのにどうして私は幸せになろうとするの?


普通を望むな


幸せを望むな


お前が守れなかったからお姉ちゃんはああなった


お前のせい


私のせい


全部私のせい


私が弱いから


私が何も出来ないから


だからお姉ちゃんを守れなかった


守らないと


失敗は許されない


お父様とお母様に託されたから


私が守らないと


守れなかったら、私に存在価値は無い


生きる理由なんて無い





ふと映った鏡の中の自分


守れなったあの時の自分


姉に似ているのに、似ていない自分


姉に似た方が、きっと姉が愛している自分を愛せると思った


だから髪を伸ばした


だけど、今のフェリスには昔の自分として映っていた


弱い自分


大切な姉を守れなかった自分


存在価値も理由も無い自分


大っ嫌いな自分


殺したいほどに憎い自分


「お゙ェえ゚ッ゙…。」


嘔吐


この気持ち悪いくらいに自分に向けられている自己嫌悪も、一緒に吐き捨てれたら良かったのに


でも、ここで全て捨てて逃げるなんて許されない


フェリス自身が許さないのだ


だって













あの時守れなかった罪は償わないといけないから
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