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新山さん (8z9r6hv4)2024/3/25 06:19 (No.99928)削除
EP Waiting for the past to become time-barred.


深い深い海の底で生まれた時から、家族に言われるがまま、信仰すべきものを信じ。

あらゆる学問を学ぶことや人助け以外には、やり甲斐や意味を見出だせなかった。

同い年の人間達は遊びや恋というものに耽っているのに、そちらにはあまり興味が向かなくて。

故郷の深海にて、起こしてしまった幼少期のあの日以降、眼を、イシを隠す様になって。
それでも人には好かれていた、けれども、友と呼べる存在は居らず。

その石蛇の人魚の少年は、ただ空っぽな日々を過ごしていた。


家の都合で深海から陸へ移住した、そこは海沿いにある都市、今では故郷と呼べる場所。


そこで人魚は一人の少年と出会う。


近所にある漁港にて、手伝いをしていた時だった。
少し離れた海岸から、ギターの音色と歌声が聴こえてきたのです。

歌や音楽というものは、この人魚の知る限りでは、信仰時の聖歌か、海底の愉快な者達が行う宴の時にしか行われない物だと思っていた。

漁港にいた時に聴こえてきたその音は、自分の知らない音楽だった。
どうしてか、初めて学ぶことが楽しいと感じた時と同じ衝動に、心が震わされた。

漁港での手伝いが終わった後、人魚の少年は海岸の方へ、音の聴こえた方へ急いで向かった。

辿り着いた海岸には木製のギターを片手に、海に向かって一人歌う少年がいた。

少年の奏でる見知らぬ音楽にその人魚は魅入られた。

聖歌や宴の音楽とは違う。
盲目的な祈りでも、陶酔のざわめきとも違う意味の込められた音。

どうしてそんなに心から楽しそうに自由に奏で歌うのか?
自分の知らない感覚、空っぽじゃないナニカ。

そのナニカを知りたくて、その日は門限も忘れて彼の奏でる音を聴いていた。

演奏が1つ終わると、己が奏でる音に魅入られていた人魚に気が付いたのか、その少年は人魚へ声を掛けた。

それを初めに、二人の少年は関わるようになった。

お互いの事、この街の事、音楽の事、学問の事。

暇な日は陽が暮れるまで、いつもの海岸で一緒に話をしたり、歌っているのを聴いたり、少年からはギターを習い、人魚は学問を教えた。


ある日、少年と人魚は約束をした。
大人になったら二人で音楽をしようと。
作曲は少年で、作詞は人魚で。
歌って奏でるのは二人でやろう。
そんな約束。

時効を迎えた今では、この約束は呪いの様に思えるけれど。
それでも、当時は夜空の中で輝く、一番星よりも眩しくて、僕らにとっては大切な約束だった。


ある夏の時期
海が大きな嵐に襲われ、大きく荒れた。
その影響により海沿いにあったこの都市は、大規模な水害に見舞われた。

約一週間、街を襲った高潮は引かなかった。
その一週間の間、都市に設けられた緊急の避難所にて、人魚はあの少年に遭遇する事はなかった。

ただ、少年の無事を祈るばかりだった。
魔法を扱うのが未熟だった頃の人魚にはそれしか出来なかった。

高潮が引き、徐々に都市の復興が進められていく中、人魚は、行方不明になった都市の住民達を探す手伝いをしていた。

なんとか生き延びていた人、手遅れだった人、いろんな人が見つかっていく中、少年は見付からなかった。

当時、唯一見つけられたのは彼のギターと入っていたギターケースのみで。

水害から1ヶ月後に、少し離れた海底にて発見された多くの人々の白骨の中に、彼はいた。

遺骨でもちゃんと見つかって良かったと思う自分と、可能性は0に近しかったけど、大切な友人に生きていてほしかったと願った自分が思考の中で混ざり合っていた。

亡くなった都市の住民達と共に、友人は弔われた。
人魚は彼と亡くなった人々が安らかに眠れます様にと、黙祷を捧げた


友人達を弔った数日後の事
彼の遺品であるギターは、人魚の元に渡ってきた。
どうやら、本来遺品を受け取る友人の家族も向こう側へと逝ってしまっていたのだそう。

受け取った遺品のギターは、ケース共々、とにかく手入れをした。
彼に教わった事を思い出しながら。

そして、ギターとケースは再び綺麗になった。
彼の元にあった頃、そのままの姿に。

しかし、手入れを終えても、人魚がこのギターを弾く事は無かった。
人魚にはこのギターを弾く勇気が出なかった。

弦に触れて、音色を聴いたら、心の奥から何かが溢れてきそうで、人魚はそれが怖かった。

ギターを一度も弾けずに、ただ時間だけが過ぎて行った。

それでも、かつて彼とした約束を、果たされることの無い約束が、無意識の内に、空白のノートにペンを走らせる事が多々あった。

もう彼の歌声はこの世界の何処にも無いのに、それでも歌詞を書いてしまう。

そんな僕は愚かなのだろうか?


実家を離れ、独り暮らしをする事を決めた時、ギターも一緒に引越し先へ連れて行った。

この先もきっと、自分には弾く事が出来ないのに、でもギターを手放す事は出来なかった。

大切な友人の遺品であり、空っぽな自分に夢を教えてくれた、それがこのギターだったから。


一人で暮らす本だらけの部屋、窓際の隅にこつりと、かつての約束と夢の続きが、ギターケースの中で眠っている。
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夜桜狼華さん (91q49ffc)2024/3/24 20:09 (No.99891)削除
轟々と燃える廃学校。







建物が焼かれ壁がドォンと音を立てながら崩れ落ちる。
そんな風景を背後に2人の男女がいた。




と、言っても普通の様子ではない。女が男に刀を突きつけていた。
女のつけてる狐の面は割れ本物の狐の耳と尻尾が生えてきていた。



女が口を開きドスの効いた低音を発した。



「鶯桜煙、お前を裏切り者として排除する。悪魔や呪いを改造し世にばら撒く行為、立派な裏切り行為である。弁明は?」




男はいつも頑なに見せなかった目を開いて微笑んだ。



「なんも弁明なんてあらへんよ、五十鈴。全部全部事実やで。」


「軽々しく名前を呼ぶな裏切り者!」




へらり、と笑いながら言葉を発し女の名前を読んだ男。
それに対して女は怒号を浴びせ軽蔑の目を向ける。




「何故、弁明をしない。」





女が口を開きそう尋ねる。動揺しないようにしているが刀を持つ手が僅かに震えている。





「弁明したって意味ないやん?」


「弁明すれば事実じゃないという証明もできる。助かる道もできる。なのに何故…?」






そう女が言う。否定して欲しい。否定してくれれば一緒にまだ生きれるかも知れない。
殺さずに済むかもしれない。お願いだ、否定してくれ。

そんな女の淡い期待は次の男の言葉によっていとも簡単に壊されてしまった。





「やってさ、俺がどんなに証拠隠滅して嘘ついて弁明したとしたってさ、五十鈴は賢いやんか、やから本当は俺がやっとることに気づいてまうやろ?な?」


「やから俺は弁明せんよ。弁明した俺を仮に五十鈴が逃したら五十鈴が犯罪者になってまうやん?五十鈴を犯罪者にはしたくあらへんし。」





そう言ってまるで幼子を安心させるような慈愛の笑みを浮かべた男。

その笑みを見て女は震えていた。なんで、そんなこと言うの。これは、仕事、だから。
公私混同はダメ、だから。今だけは心を殺して。





「だから私の名前を軽々しく呼ぶな!」






女はそう叫んだ、

本当はその瞳に、笑みに、縋ってしまいたい。
でも、貴方が私が犯罪者にならないことを望むなら。私はその通りに。




「なんで、裏切った…!」




そう女は呟きを溢してしまった。
本当はこれすらも聞いてはダメのかもしれない。そんなことはわかっている。

でも、聞かずにはいられなかった。




「五十鈴はさ、この世界にさ満足できてるん?」



「悪魔だからって皆殺し。呪いもそう。でもな、悪魔も呪いも同じ生物やない?」



「確かに大切なものをいくつも奪ったかもしれない。でも、そんな奴ばかりやないやん。」



「俺はな、悪魔や呪いたちを妖怪たちと同じように見てしまったんよ。」



「だから少しでも救ってあげたい思うて、改造してまた世に放った。」



「刺激が欲しかった。学生の頃みたいに楽しいってなりたかったんよ。」



「悪魔と呪いに助けられたとしても関わったら即処刑。それって可笑しいと思わん?」







男にそう言われて女は返す言葉がなかった。





でも、否定しないと自分がおかしくなってしまいそうで、






「うるさい、五月蝿い、煩い!黙れ!そんな戯言を吐くな!」




そう女は怒鳴った、そのすぐ後に




「私は、信じてたんだよ。信じてたんよ。なのに…、」



そんな泣きそうな顔をしながら消え入りそうな顔で呟き地面に横たわる男に覆い被さった。




「ごめんなぁ、ごめんなぁ、最後まで何もしてやれんで。こんな幼馴染で、兄貴で、ごめんなぁ。」



そう寂しそうに微笑みながら謝る男を見て女はもう体を震わせていた。






「ほら、殺りぃや。早く殺りぃ。な、?」





そう言われてようやく女は動き出した。震える手で無理矢理刀を掴みなおして。
ゆっくりと男の首に当てた。


「五十鈴、またなぁ。小梅のことよろしくなぁ。元気でやるんよ。すぐにこっちきちゃダメやで。」






「黙れ、軽々しく名前を呼ぶな。地獄でほざいてろ裏切り者め。」





そう女が言い、男の首が一気に飛ぶ。死んだ男の顔は驚くほど穏やかで慈愛の笑みに満ちていた。



しばらく女はそこに立ち尽くしていた。ただ虚空を見つめて。何かするわけでもなく。
ただただそこに居るだけだった。

何時間も経ったようだった。実際には数分であっただろう。

女の背後に女とも男とも取れない人物が現れた。


「五十鈴、終わった?」


その人物がそう言葉を女に向けて発した。
女は少しの間を開けてようやく口を開き答えた。


「うん。」


「そっか。」


たったの2文字、それだけの言葉。
でもその言葉には沢山の感情を込めているのをその人物は察して女を優しく抱きしめた。



「可笑しい、思う?世界。」


「私にはもうわからへんよ…。」


人物が発した言葉に女は涙声で答えた。
人物は抱き締めるのを辞めた。女は人物の目を見つめた。人物は女の目を見上げて見つめた。


「2人きりになっちゃったね。」


「うん。」


女の目には堪えきれなくなったのか水の幕が張っていた。目から雫が落ちた。
人物はその雫を拭った。

女は能力を使い鬼を降霊した。そして鬼の体に増えた。黒いモヤのようなものが女に吸い込まれていった。女は降霊を解除した。


「封印、した?」


「うん。」


人物の短い質問に女は素っ気なく答えた。
それから人物に向かって手を出していった。


「帰ろう。」

「うん、帰る。」


2人の人影を炎が赤々と照らし出した。


※ifストーリー
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ヘルさん (90xdn9d1)2024/3/20 08:35 (No.99301)削除
産まれた家は一般的に”家庭崩壊”の家だった。


父は借金で酒に明け暮れる

母は育児放棄

兄は女遊びで朝帰り 

姉は男と遊びに行って帰ってこない。

そんな家庭に産まれた
もちろん母は育児をしない。
自分で産んだのに育児をしない。
なので3歳まで育ててくれたのは姉だった。
少ないミルクを作りオムツを変え、お風呂に入らせてくれた。




3歳までは


3さいになったらじぶんでしろっていわれた。
ぜんぜんできないことばかりいつもおかあさんに殴られ蹴られた。
おかげでしゅうの体はきずだらけあざだらけだった。
さいしょはおさらあらいから始めた。なんかいも皿を落として怒られていた。

いたかった。かなしかった。お姉ちゃん。たすけてよ。

かってきてよ、おねえちゃん。こわいよ、お姉ちゃん

おかあさんが「自分の身は自分で守れ」って言われた。

天乃家は毒魔法を持っているから毒魔法で守れって言われた

まぁ、おかあさんはそれがほんとうにおこるとは
                思わなかったのかな  
                       バカだね


6歳の時にはもう家事全般は出来るようになっていた。







そんなある日だった
家事を終わらせ、自分が眠りについた頃、
眠れなくて起きた時、
こんな会話が聞こえた




「愁を、殺そう」




「あなた何言ってるのよ!!あいつはいい召使でしょう!?」



「まぁ、俺、愁の事嫌いだし殺していいと思う」



「私も、もうお世話なんてこりごり、早く殺しちゃいましょう」




家族全員が俺を殺そうとしてくるのが分かった。

逃げようと思ったら捕まった。


「あ、しゅーう?おいで!」兄の声


「こっちでご飯食べよう?」姉の声

「おいで愁」父の声

「みんなで食べましょう」母の声

全部嘘絶対に嘘、家族全員こんなに優しいはずがない。

今行ったら殺される。兄が近づいてきた。鏡で反射する兄の背後。包丁を持っている。不味い殺される。










死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い











暗転









気を失っていたらしい、目が覚めるとそこには倒れた家族4人



紫の霧



もやもやとした綺麗な紫色。
どこから出ているんだろう。


母達は寝ていると思い、体を揺すった。
だけど起きない、手を触った。冷たかった。



まるで死人の様な。
鏡に自分の姿が映る。



霧の発現体は俺だった。



口から紫のモヤを出している自分。
目には紫の液体が流れ出ている
涙みたいに、落ちた液体が母の掌に落ちる。
その瞬間、皮膚が爛れた。
止めようと思っても止めれない霧と涙どうしよう。
自分が母達を殺したのと止められないで溢れ出ててきた涙。
紫の涙。ぼたぼたと雫が落ち、母の掌が爛れる。
いつまで泣いていたのだろうか、








すでに霧や、涙は出ていない。



だけど、1人の人影、



顔を上げてみると綺麗な銀髪の女の子綺麗だな、
彼女は言う一緒に着いて来ないみたいな感じ、あんまり覚えてない
少年を言う着いていけるなら着いていきたいと、







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


これが後々副団長になる男と、団長の女性の出会いであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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芝生さん (8zcpvqfm)2024/3/10 22:37 (No.98181)削除
カリュオン
『どこもかしこも青かった』

ック…ヒフッ…
耳に届く誰かの鳴き声。
思い出すは小さな頃の記憶。
何も無い空間で俺が1人、目をこすって泣いていた。
何もかもが普通、取り柄がない俺は面白みも無い。
1人になってしまうには十分な理由。

誰にも必要とされない。

大きくなっても何をしてもそれは変わらなかった。
誰かに必要とされて欲しい。
俺だけができる何かが欲しい。
唯一の存在になりたかった。
でも、俺に何ができるんだろうか。

何もかもが手の届く距離にある、だけど手は伸ばせない。
俺よりきっと適任がいると、後ろから眺めていた。
いつでも何度でもチャンスはあったのに、それを全部ゴミ箱に捨てた。
「あーぁ、それでいいの?」
俺じゃない誰かが囁く。
うるさいっ、俺が決めたことなんだそんな事言わないで。
「どうせ後悔してるくせに」
わかってる、わかってるよ。
でも、それでも…だってそれは…
「自分に正直になりなよ」
黙ってよ!
これ以上何も言わないで!俺を否定しないで!
お前だって、お前だって…!
振り向いた先には傘をさした男がたっていた。
大親友だったはずの、大好きだったはずのあの…あの…っ。
彼は俺を見ていた。
空のように澄んだ瞳は、俺の心を見透かした。
呆れたように息を吐く。
最後に聞いた言葉は──
「勝手にしたら?」
瞳は、口は、震えて何も言えなかった。
俺の手のひらから零れていく彼。
雨が去って行く。
代わりに俺の頬を涙が伝って行った。
何を間違えた。俺は何をしたかったんだろう。
少なくとも大親友を無くしたいなんて思ってなかったのに。

──

「オニイチャン…お兄、チャン…ッ」
…いつも通りの天井に嗚呼、夢だったんだと理解する。
鳴き声は隣で眠っていた小さな子。
俺に縋って泣いていた。
泣かないで、怖くない、俺がいるから。
みんないい子。悪い子なんて居ない。
大丈夫だよ。俺が守ってあげるから。
同じ思いなんて差せないから。
君たちは未来がある、俺より素敵で、1度も涙を流さなくていいような未来が。
だから今日もまた鍛錬する。
俺はこのままでは行けないって分かっている。
撃て、殺せ、情なんて持つな。
分かってるのに、銃口はぶれていた。

……これで、良かったのかな…。
アイツは許してくれるかな。
小さな頃みたいに、2人で笑って、泣いて、仕方ないなーって呆れてくれる?

…結局何になりたかったんだっけ。
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グラサンさん (8zkxxs3h)2024/3/9 23:07 (No.98049)削除
10年程前のある日


「んーーー!つっかれたぁ…久しぶりに殺したなぁ…血の匂いヤバっ…」
背を伸ばしながら路地裏を歩く薄い金髪の女
RADに所属するただの遊び人のロージー・インピュア
彼女は少し血に濡れた服を身にまといながら帰路についていた
何をしていたのか?彼女が所属する組織を考えたら簡単なことであろう

その時だった彼女の横を通り過ぎようとする少女がいた

金髪で金色の瞳を持つ背の低い火傷をおった少女

当時、何でも屋として暮らしていた黄龍シオンだった

全然似ていない
全くもって似ていないのに
彼女は“あの子”と重ねてしまった

それに火傷をおい、逃げている女の子を見て助けない選択など彼女にはなかった
だからその腕を掴んだんだ

「…君、名前は?私はロージー。ロージー・インピュア。」

保護をしたのはいいけれど警戒が強いのかずっと睨まれていた。
そんなシオンを見て、ロージーはクスリと笑い

「とりあえず名前教えてくんね?治療とご飯、一日の寝床の対価ってことでさ!」

「……チッ…別に頼んでない…。」

と面倒くさそうに言いながらも

「シオン…黄龍シオン。」

と名を教えて貰えた。

黄龍シオン、彼女はその名前に聞き覚えがあった。
何故かって?遊び相手から聞いた事があるから。
幼い小柄な少女の腕利きの何でも屋と。

シオンの人生に何があったかなんて分からない。
けれど、こんなに小さな女の子が酷い火傷を負い、明日も分からぬような仕事をしているなんて見逃すことが出来なかった。

一瞬でも妹と重ねてしまった。
愛おしい自分の宝物。
穢れなど知らなかった純粋無垢な天使。
あの子の面影を少しでも重ねた、この少女を放っておくことが出来なかった。

「シオンちゃん…お仕事興味無い?給料が安定、衣食住も確保出来るお仕事。ちょっとばかし危険だけど今よりは快適な生活を送れるからさ。お姉さんもそこで働いてるし色々と保証はしてあげるよ?それに君のことは噂で知ってるからその腕も欲しい。」

すぅと息を吸い込んでロージーはシオンに笑って手を伸ばす。

「……RADに入らない?政府様直属の殺し屋組織?みたいなところ。歓迎するよ黄龍シオンちゃん!」
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グラサンさん (8zkxxs3h)2024/3/6 17:26 (No.97661)削除
とある小さな村があった

そこにある祠のような赤い鳥居の先にの神社の中に鎖で繋がれた少女がいた

青い髪
青い瞳
青い龍の羽
青い龍の尾
美しい龍の角

巫女の服を身にまとった青龍の少女

生まれた時からここに閉じ込められていた
それが普通だったから疑問にも思わなかった
鱗を取られても、血を取らても、ご飯を抜かれても
それが普通だと思ってた
痛いけど
苦しくなかった
寂しくなかった
父と母……そして大切な友人がいたから幸せだった

「せんじゅ…せんじゅ?…せんじゅ!」

首をこてんと傾げる少女
名のない青龍の少女に名が与えられたとき
その子はとてもいい笑顔で笑った

それから何年間もそうしていた
いや何十年、何百年かもしれない
もう覚えてすらいないのだけど

ある日のことだった。
神社の前にあの子がいる気配がした
大好きな友人がいた

鎖を繋がれた足をトテトテと動かしながら彼女は近づいて行った

「ぺいん……ぺいん!」

と名前を呼びながら近づいたけどその子は気づいていないらしい

その時に聞こえた言葉
友人から聞こえた言葉
好きな人から聞こえた言葉

「早く死ねばいいのに」

グサリと心に刺さっていく
えぐれて壊れる音がする
死ねばいい……?誰?…自分?
心が壊れてる音がする

信じてたものが…好きだったものが…恐ろしく見えてきた




カラカラと音が鳴って消える心
目から光が消えていく
立ち上がって神社を徘徊した時に見つけた何か
鎖は断ち切られて奥の方までいくことができた

龍を殺す人々の壁画
生贄を捧げる壁画
自分に似た龍の少女が殺される壁画


あぁ…最初から自分は……



許しを乞う声がする

泣き叫ぶ声がする

化け物だと

悪魔だと

忌み子だと

自分を呼ぶ声がする







大雨が降り大地は揺れ

大木の根に飲み込まれ

一つの村が滅んだ

1人の心を壊れた少女を残して消えてしまった


「皆殺し。許さない。」


すべてを恨み感情が崩れた


喜びも

悲しみも

嬉しさも

苦しみも


あの人に向けた淡い恋も……


憎しみへと変わっていく


「……友達だと。思ってた。」


すぅーと一筋の涙が頬を伝って落ちていく。

みんなみんなだいきらい。
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柚子カレーさん (8zml5wu2)2024/2/21 21:08 (No.95982)削除
【長子の証言】

俺が初めて目を開けた頃、少なくともその男の手は義手だったし、目が合ったことなんて1度もなかった。
そいつは片腕がなくて、目も見えていなかった。それでも、多分。母のことを愛していたし、俺のことも愛してくれていた、んだと、思う。姿も分からない俺たちを、それでも愛してるんだよ、というその言葉に、嘘があった、とは思えないし、思いたくもない。
ただ、全てがおかしくなったのは、母が消えた頃だった。父は、見えないのに見えていた俺のことも意識の外になって。そこが家だ、とでも言うように、母の墓から離れなくなった。家には、寝るために帰るようなものだった。
父に母しか居ないことは分かっていたから。それに対して俺は何も言えなくて。でも、しばらくしてようやく俺は気がついた。俺が生まれた日から、父の容姿が変わっていない。

「とう、さん。あんた……」

よく良く考えれば。母が死んでから既に百の歳月がすぎている。人であるはずの父が生きていること自体、既におかしいのだ。
降って湧いたその年月に耐えられるほど、父は強いひとではなかった。当たり前のことだ。多分、父は理解していたのだ。母が死んだ瞬間から。愛した人のいない世界で生きる、長い長い時間を。これから続いてしまう、母のいない永遠を、理解してしまったのだ。
自分が先に死ぬはずだったのに、降って湧いた孤独。蝕まれた父は、多分もう。まともじゃない。

「……ヴァル。アルラウネ。適当な女連れてこい」

何故種族の指定があったかは分からないけど。その時の俺は、父がようやく前に進むことにしたのだろうと思った。思ってしまった。だから、そうして。ここからもう、俺たちは引き返せなくなった。

しばらくして、アルラウネは子供を孕んだ。子供が生まれたことを確認すれば、父の興味はその女から無くなってしまって。父の目と腕が、生えていた。ここでようやく、俺も父の力を理解した。あぁ、最悪だ。俺は、選択を間違えた。

父は母を忘れ。露悪的になり。いつの間にか、そういう人間になっていた。諌めなかったのは俺だ。父の生きる時間に、何も気づかなかったのは俺。気づいても諌めなかったのも俺。ここに至っても彼を止めていないのも俺。

必要な能力、欲しい能力があれば、父は女を犯した。子が産まれるまでは父は実にいい夫を演じていた。だが、子が生まれれば既に興味もなく、それを捨てていく。あの日、冷たい義手で、暖かく笑った父は、もうどこにもいなかった。

「おっと、失礼」

父がある日すれ違った女。若い、どころか。まだまだ少女に近い、美しいブロンドの女。太陽の下できらめく、美しい黄金色。それを見た瞬間、息を飲んだ。

「あら、ごめんなさいね」

その声を聞いて、父は。何か、全てを落として来たような、あるいは全てを取り戻したような、顔をした。
ああ、あんた。声まであの人と同じなのか。

その少女は、体が弱いから。あまり外に出る許しが貰えないのだと言った。その笑顔は、あまりにも、母にそっくりで。話し方も、振る舞いも。彼女は、あまりにも。

二人の間に子供が生まれるのは、時間の問題だった。けれど、体が弱い彼女は。子を産むことに、耐えられるような生き物ではなかった。やがて生まれた子供は双子で。その娘は、あまりにも生き写し。

「ヴァル。捨ててこい」

父は、双子を見もせずにそう言った。双子を、見ることも出来ずに、そう言った。
愛した娘を殺した子供だ。愛した娘に、あまりにも似た子供だ。だが、親を名乗るには。父はあまりにも、穢れていた。彼らを抱くには、父の腕は、とうに汚れきっていた。

「ごめんな、可愛い子たち」

俺も。兄を名乗ってやるには、あまりにも。父の行為に手を貸しすぎたから。俺たちの手元におくには。俺たちは、もうとっくに。
だからどうか許してくれ。せめて、せめてちゃんとした場所に預けてやるから。恨んでくれていい。憎んでくれていいから。せめて、どうか。生きてくれ。

多分、父はまた。数千の時間に侵されながら、この娘のことも、時間の中に置き去りにして。忘れられないくせに、忘れたフリをして。繰り返していくんだろう。
今更止める権利も俺にはないから。だから、だから誰かさ。この残酷な時間から、あの人を、そんでもってさ、出来れば、俺のことも、引き上げてくれないかなぁ……
柚子カレーさん (8zml5wu2)2024/2/21 21:17削除
【人でなし談義】

「よぉ葬列男」
「……相変わらず喧嘩売ってくるじゃねェか狐」

銀髪の男の座るカフェテラスに、革トランクを持った金髪の女が相席する。まだ銀髪は是を答えていないのに、だ。

「いやぁ、探してたんだぜ?知り合いのセイレーンが生活に困っている、ってんで。興味無いか?」
「……ふゥん?何が出来る?」

ウェイトレスが持ってきた紅茶を、銀髪は一口だけで、そのまま狐の前へ押しやった。

「もちろん遊泳だ。お前に鱗が生えねぇのは面白くねぇけどな」

その紅茶を飲んだ狐も。うわ、という顔をして、それをソーサーにそのままこぼす。

「見た目までは変わんねェよ。遊泳だけかよ」
「んん、水も操作できるぜ。てめぇの生成と相性いいだろ」
「……あァ……ガワは?」
「上玉」

差し出される写真。ふぅん。銀髪の男の、口の端があがる。ぐしゃ、と握り込めば、写真は灰へと変わる。

「いいぜ、世話見てやるよ」

ぱらぱら、と、燃えカスがソーサーの中に落ちていく。交渉成立だな、とばかりに、金髪はトランクからひとつの鍵を取りだした。

「この家の水槽にいる。家ごと貸すぜ?半期払いな」
「おう。2年くらい借りるぜ」

ふらり、と席を立った銀髪。その後ろに、よく似た銀髪が、そっと並ぶ。
ひらひら、と手を振った金髪は、ソーサーを地面にぶちまける。

「くっそ不味い紅茶」

ふ、と。黒いモヤが風に溶けて。誰もそこには残らなかった。

3年後。金髪の手元には、ひとつ増えた商品と、自動演奏楽器のロールが5本。

「支払いどうもぉ」

もちろん、現金だって残されているが。

「金もらって商品が増えるってんだから、いい商売だよなぁ?」
柚子カレーさん (8zml5wu2)2024/3/6 14:13削除
「カーバンクルと朱雀、ねぇ」

目の前でコーヒーを啜る父が、そうボヤく。なにかの戯曲の話だろうか。そう思いながら、目の前のタルトにフォークを突き刺した。

「お前の弟の話だよ」

スザク、鳳凰、火の鳥。──太陽を、抱く鳥。苛烈で鮮やかな、あの黄金色。

「……そう。じゃあ、あの子もこっち(長命)側に来るのか」

内心の動揺を、タルトごと飲み下して、そう答える。その刹那。右目に、フォークが突き刺さる。失言だった。動揺は言い訳にはならない。尊厳や運命が容易く歪められる中で、人が人のまま死ぬること。あり方、存在をゆがめられぬこと。これらがどれほど得難いものか。父は知っている。その前で、口に出すべき言葉ではなかった。
フォークを眼球ごと引き出して、そのまま口へ。

「……いい事だろ」

石もなくなったあの子のことだから。石目当てではなく、正しく愛してくれる子が相手なのだろう。だとすれば、それにとやかく言う権利は、俺にはない。

「ちったァ顔も取り繕え。夢見るのは結構な事だが。お前に太陽はない」

心の臓に、杭が刺さる。吸血鬼だから、では無い。ただ、存在しないのだ。俺たちには、太陽も、月も。照らされることの無い場所で、生きている。夢見たところで辛くなるのは自分だ。そんなの、言われるまでもないのに。鉄錆の味が、口元に広がる。

「お前に、太陽の迎えは、二度と来ない」
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柚子カレーさん (8zml5wu2)2024/3/3 00:21 (No.97067)削除
自分は母に愛されている。母は俺の名前を呼んでくれる。母は、弟のことをアレ、コレ、ソレ、と呼ぶ。けれど、俺のことはきちんと名前で呼んでくれるのだ。それに、母は弟を、奥の部屋に閉じ込めていないように扱う。どこに行くにも、誰と話すにも。母は自分の子供は1人だけだと言っていた。自分は、母に愛されている。

(兄は母に愛されていなかった。母は兄を──と呼んだ。俺のことは呼ばないまでも、名前をつけてくれてはいたのに。兄のそれは、兄の名前ではなかった。それに、母は兄をいつも籠に入れて連れ歩いた。どこに行くにも、モノのように扱った。自分の子供は不出来な子供が1人だけで、家に残しているの、と。兄は、母に愛されていなかった。)

とはいえ、仮にも弟。母が彼の世話をしないなら、自分が面倒を見てやるべきだ。そう思っていた。だから、食事も母に内緒で分けてやったし、学校で学んだことも同じようにアイツに教えてやっていた。だって自分は兄だから。だって自分は持てるものだから。弟を愛しているから、では無く、幼い優越感。それが理由だと、自分でも認めている。聡い弟の事だから、きっとそれには気づいていたはずだ。それでも弟は、自分を慕ってくれた。

(それでも兄は兄。何も知らないからこそ笑える兄に、それを指摘する気にはなれなかった。余計なことを言って、その笑顔を曇らせたくはなかった。そう思っていた。だから、兄の事を兄ちゃんと呼び、兄のやることも否定しなかった。だって彼は人形だから。だって彼は愛されていないから。自分だけでも、彼を愛したかった。たとえ彼が、俺を愛してくれていなくても)

けれど、俺が100を超える頃。白かった髪は、すくすくと日を浴びて。周りと同じ、緑の髪へと。葉緑素を得て、光と水で育つ生き物へと。変わっていった。当たり前の変化だ。子供のうちは少なかった葉緑素が、成長とともに増えていく。同じ時期に生まれた子供たちの誰もが通る成長。当然、自分も同じ成長を辿る。それが誇らしかった。どんどんと濃くなっていくその色は、アルラウネとして健やかな証。けれど、母はそれを喜ばなかった。日に日に染まってゆく髪に、母は唇をふるわせて。弟が今までいた部屋に、俺の事を閉じ込めた。白くなりなさい。戻りなさい。それが、最後に聞いた、母のまともな言葉だった。

(俺たちが100を超える頃。とうとう俺たちにも成長期が訪れた。日をなかなか浴びれなかった俺も、少しずつ緑へと染まっていく。水は与えられていたから。陽光がなくとも、周りより遅くとも。確実に緑へと。兄よりも遅く薄いが、綺麗な緑。誇らしかった。兄と同じ色。けれど、母はそれを喜ばなかった。日に日に染まる兄の髪を、怯えたような目で見ていた。ある日、兄が俺の部屋へ、放り込まれた。白くなりなさい。戻りなさい。それが、初めて聞いた母のまともな言葉だった)

日を浴びていない弟ですら、アルラウネとして染まっているのに。暗室に閉じ込められた程度で、髪が戻ることなど有り得なかった。母は、毎晩確かめに来ては、言葉にすらなっていない罵声をぶつけてきた。どうしてなのか、俺にはどうしても分からなかった。けれど、全く効果がない、という訳でもないのか。やがて、弟の方が、濃い緑を示すようになった。俺の緑は、くすみ始めていた。アルラウネとして正しい、濃い緑を失っていく恐怖。母の言う、白に近づけば、また愛されるかもしれないという期待。どちらに傾けばいいのか。もう、俺自身もわからなくて。それでも、砂で洗ってみたり、髪どうしを揉み込んでみたりして、もっと薄くならないか、必死になっていた。

(陽光のない己ですら、アルラウネとして正しく緑を呈しているのに。暗室に閉じ込めた程度で、兄の髪が戻るわけが無い。母は、毎晩確かめに来ては、そんな色は──の色じゃない!目は同じ色なのに!どうして!と叫んだ。兄は、とっくに壊れていて。既に母の言葉も、俺の言葉も理解出来ていなかった。けれど、ストレスなのか、なんなのか。兄の髪は、くすみ始めた。まずい、と思った。葉緑素を失うのは、栄養を作れなくなるということ。兄が、衰弱していく証。自分の分の水や食料も兄に分けて。兄が死なぬよう、必死だった)

けれど、何も報われなかった。暗室に閉じ込められて、25と少し。おかしくなりそうな時間なのに、おかしくなることも出来ず。弟は、とっくにおかしくなっていて、既に意味のわからない音の羅列を喚くだけになっていた。共倒れだけはゴメンだった。こいつと同じになって、母の愛を失いたくない。取り戻したい。けれど、母はやはり言葉をくれず。与えられるのは、怒声と暴力だけだった。今まで、殴られたことなどなかったのに。そんなの、弟だけだったのに。俺は、見下していたコレと同じ立場に落ちたのだと、理解するのが怖かった。

(兄を、どうにか生かし続けて、150と少し。最早兄と会話など成立せず。兄は、あーとか、うーとか。喃語をボソボソとつぶやくだけになっていて。共倒れだけはゴメンだった。兄まで男に捨てられ狂った母に殺されたくない。逃がしたい。けれど、もう兄の目はどこにも焦点を結ばない。与えられる暴力から庇うのも限界で、けれど、兄は、俺の傷すら見えていなかった。兄はもうダメなのだと、理解するのが怖かった)

それから10年。いつものように部屋に飛び込んできた母は、その右手に、何かを提げていた。本能が悲鳴をあげるそれ、けれど、それが何か分からず。やめても助けてもどこにも届かず。じゅう、という音と、絶叫が聞こえた。怖くて目を閉じて、必死に耳も塞いで、丸くなっていた。しばらくすれば、音もしなくなって。くらい中、手探りで探せば、右目を焼かれたらしい弟がそこにいて。しゃくり上げる弟を抱きしめて、一緒に泣くのが精一杯だった。

(それから50年。部屋に飛び込んできた母は、火のついた炭と焼きごてを持っていた。本能的な恐怖に、それでも必死に兄を庇った。けれど叶わず。──にならないなら、そんな色の目をするな!母の叫び声と同時に、兄の両目は焼き潰された。とうとう兄が殺されるのだと怖くなったが、目だけ焼けば母はふらりと部屋を出ていった。目のない兄は、手探りで母の置いていったものを探して。それを俺の右目へと押し当てた。俺の絶叫に、兄は確かに笑って、俺を抱きしめた。慰めるように撫でてくるその手に、兄はもう自分が何をしているのかも分かっていないのだと、理解してしまった)

それから5年。ある日、弟が俺の口に根を噛ませ。まるで子供でもたしなめるように、シー、と耳元で囁いて、部屋を出ていった。あぁ、逃げられる。俺だけこの地獄に残して、あいつだけ逃げてしまう。どうしてそれを許さなくては行けない。地獄にいるのも。愛されないのも。苦しむのも。俺じゃなくて、あいつの役目だろうが。ふつふつと湧く怒りに、暴れようにも四肢は既に根で抑え込まれていた。叫ぶことも、逃げ出すことも出来ず。とって変わって、恐怖が湧き始める。このまま母の来る夜が来たら、今度こそ死んでしまうのではないかと、酷く酷く怖かった。

(それから50年。もう兄は限界だった。ただただ音と唾液を垂れ流す兄の口に根を噛ませ、目を隠し、部屋の隅に隠してしまった。そろそろ夜がくる。母が来る。母はこの部屋に日を入れようとしないから。隠してしまえば、見つけられまい。根の中で兄が暴れるのを感じながら。やってきた女を。殺した)

永遠にも思える時間の後。帰ってきた弟は、そっと俺の手を握った。「兄ちゃん、ごめんね。もう大丈夫だよ」そう言って、手を引かれ。何年かぶりに、俺たちは外に出た。「みんなに見つかると困るから」そう言って、夜道を2人で走った。人里に紛れ、昼に寝て。夜に2人で働いた。まっとうな働き方も知らない俺達には、それしか無かった。弟が、対価として持ってくる果実を2人で分け合った。

(母を殺して、兄の縛を解いた。けれどもう兄に正気はなくて。その肩を揺さぶっても、どれだけ声をかけても、兄は何も反応を返さなかった。どうして!叫び声ととに振り下ろした腕に、ようやく兄はこちらを見て。「こーき…?」と呟いた。それだけで、もう十分だった。兄が俺の名前を、まだ忘れないでいてくれた。それだけで、全てが報われた。兄の手を引いて、里を飛び出した。兄は自分の目が焼かれたことも覚えていなかったようで。こんな夜にどこに行くのだ、と問うてきた。人里に紛れて、人を襲って暮らした。兄は、自分たちが何をしているのか、理解出来ていなかったから。都合が良かった。人間だった果実を、二人で食べて暮らした。)

ある日、突然。カチン、と頭の中で音がした。今まで聞こえていなかった音が、突然頭の中に入ってきた。夜だと思っていたのは、俺の目が見えていないだけで。働いている、と思っていたのは、人を殺していた。暗室の中で、それでも死なずにいたのは、弟が庇ってくれていたこと。その弟の目を潰したのは、母ではなく自分であること。呼ばれていた名前は、自分のものではなく。そもそも自分には、名前などつけられていなかったこと。愛されていたのではなく、ただの身代わり人形でしか無かったこと。目を背けていた、背けたかった全ての記憶を。何かが切り替わるように、突然、理解してしまった。そこからは、地獄の日々だった。叫び暴れる俺と、それを必死になって止めようとする弟。死のうとして暴れる俺と、殺してでも止めようとする弟。誰かの命を吸い上げたものなど食べたくない、と閉ざし、何もかもを吐き出した。その口を割りあけられ、口移しで喉の奥まで流し込まれる果実。何もかもが地獄だった。

(痛みがなければ兄は俺を見てくれないから。毎日殴って、そうして兄に果実を渡す生活。痛みがなければ、兄はぼんやりと空を見て、あーあーと呻くだけ。そんなある日。いつも通りにその頬を殴った瞬間、突然兄が叫び出した。嘘だ、やめて、なんで、どうして。実に久しぶりに聞いた、兄の、ちゃんとした言葉だった。嫌だ、そんなもの食べたくない!そう言って果実を放り出した兄は。まともだった。まともに、なってしまっていた。自分の罪に、耐えられるわけがなかった。それでも兄を生かしたかった。兄と暮らしたかったから。殴ってでも、けってでも。何をしてでも、兄の口に果実を流し込んだ。兄を生かすために、兄に触れられる。今までと違って、正しく俺を見て、俺を拒絶する。あまりにも苦しかったから。それを幸福と呼ぶことにした。)

自ら傷つけ。弟に傷つけられ。常にどこからか血を流している俺を。それでも弟は必死に手入れをする。あの暗室にいた頃のように。必死に、生かそうとする。俺が弟につけた傷など、手入れもせず、水につけるだけで放っておくのに。俺の体にあるキズは、コルク化したら困るよ、なんて、丁寧に丁寧に処置していく。暴れるだけ暴れて、疲弊して、壁に持たれるのが精一杯のある日。とうとう俺は、パンドラの箱を開けた。「どうして、そんなに俺を生かそうとすンの」「……愛してるからだよ、兄ちゃん。ガキの頃からずっと。俺は、兄ちゃんが生きててくれるだけで、幸せだったんだよ」「………過去形なのか」は、と。息を飲む音がした。見えていないのに。弟が今、俺の顔をじっと見ていることが、理解出来た。「進行形に決まってんだろ」震える声で。弟が俺を抱きしめたから。ようやく、初めて。愛している、という感情とともに、弟を抱きしめた。どんな手を使っても。何をしても。この子を、愛してやらなきゃ行けないと思った。今までの分も。これからの分も。

(どれだけ酷い傷を負っても。アルラウネは、水さえあれば快復する。陽光もあればなお良い。それでも、コルク化し、醜く膨らんでしまうこともある。兄が醜くとも構わないけれど。それでも、兄の傷は大切に扱った。自分のせいで、兄の肌がコルク化していくなど、耐えられなかったから。ある日、ぼう、と中空を見ていた兄が、口を開いた。何を今更、そんなことを聞くのかと思いながら答えれば。帰ってきたのは意外な言葉で。もう、どうしていいか分からなかった。過去形ならこんなに必死なわけがないだろ。とっくに見捨てている。泣くしか出来ない俺を。兄は、ようやく、初めて。愛してくれたから。どんな手を使っても。何をしても。兄を守ると決めた。例え、傷つけようとも。何もかもから、この人を守るのだと)
柚子カレーさん (8zml5wu2)2024/3/5 23:25削除
父が、ピタリと足を止めて。暗がりの向こうを、じっと見つめている。
猫でもあるまいに、と思うが。大抵こういう時は、なにかの声を聞いているのだ。ややあって。ふ、と父の目元が柔らかくなる。

「次男坊共も独り立ちかァ」

そう言って、ぶらりとそちらへと足を向ける。
それは、本当に。子の成長を喜ぶ父の顔で。そういう顔をされるから、この人を見捨てていのか、わからなくなる。期待を捨てていいのか、不安になってしまう。
路地をぬけた先にあったのは、今にも崩れそうな平屋。その扉を。父は当然のように開け放つ。その瞬間、饐えた臭いが鼻をつき。思わず顔をおおった刹那。黒い闇の中でも何かがきらめいて。思わずそれをたたき落とす。

「ぅ………」

地面にたたきつけられたのは、小さな子供。呻きながらも、こちらから視線は逸らさず。奥へ進ませまいと、睨みつけてくる。

「おいおい。いきなりご挨拶だな」

父が、その指先に火を灯す。その光に、子供はひゅ、と喉を鳴らして。それでも、こちらから、目を逸らしもせず。その奥に。四肢の腐った子供がいた。

「あー……?ありゃダメだな。あと1ヶ月か?」

そう言った瞬間。弾けるように子供が飛んだ。その手にあるのは、剪定バサミ。人間を殺すには、力不足。あっという間に、その首を掴まれて吊り上げられる。

「おいおい。やめとけって。片方でも生き残れるだけ十分だろうが」

そう言って、父はその子供を放り投げる。その顔を見た時、もうこの子供たちに対する興味は無いのだと、理解出来てしまった。仮にも自分の子供に対して、だ。けれど、父はもう、そういうものになっている。なってしまった。俺が、間違えたから。

「………俺がこいつら、引き取っていいか」

それでも。独り立ち、と柔らかく笑ったあの目を、嘘にしたくなかった。あの頃の父が、まだ残っていると信じたかった。残っていることにしたかった。気にかけないまでも。彼らの生存くらいは、許す父だと、思わせて欲しい。彼らのためでも、父のためでもなく。この男のために、ここまで手を汚してしまった、自分のために。何もかも間違えた、あの日の僕のために。
その、浅い浅いエゴを見透かすように、父は笑って。

「5年な」

と、それだけで、出ていってしまった。
残されたのは、俺と子供が2人。手の中に、とりあえずで葡萄をつくる。まだ覚えたばかりの魔法。正しく効果するか、不安になりながら、まず目の前の子供の口の中に押し込む。暴れる子供を押さえつけ、無理やり飲み込ませる。最初は抵抗していた子供も、その果物の意味に気づけば、ようやく大人しくなる。もう一粒、もう一粒と口元に差し出せば、大人しくこくこくと喉を通していく。もうその四肢に怪我はないか、触って確認をする。
暗い中でよかった。焦り、泣いているこの顔を見られずに済むから。見知らぬ他人にそんな顔をされたって、彼らも困るだけだろう。

「にーちゃんも、にーちゃん、にも」

子供が、必死に俺の服の裾を引く。魔法は万能ではない。魔法は全能ではない。あそこまで腐っていては、治せない。腐敗までは。かくなる上は。

「……見ると辛いぞ」

四肢の付け根をベルトで縛り上げる。指を振れば、かまいたちが襲って、その腕が切り落とされる。そうして、子供の口に果実を運ぶ。残った果実で、腕1本どうにか。

「……今日は、これで限界だ。……のこりは、また」

切り落とされた腕を、口元に運ぶ。腐った血でも、ないよりはマシ。腐った肉でも、喰わぬよりはマシ。
壁にもたれるようにして座り込んだ俺から、あの子供が兄を抱えて距離をとる。賢い選択だ。腐り切り落とされたものとはいえ、自分たちを喰らうものを警戒する。生物として正しい判断。思わずこぼれた笑いを、馬鹿にされたと思ったのだろう、子供が睨む。

「……聡い子だな……名前あるだろ。教えろ」
「光希。……ひかる、のぞみ」

皮肉な名前だ、と嘆息する。この現状に、光も希望もありゃしないだろうに。

「そっちは」
「めるつ。ははおやはそう呼んでた」

は、と息が詰まる。どうせ子供を産ませて捨てるなら、どうして優しくするのだろう。あの男は。そらみろ、悲劇しか産まないじゃないか。

「……ゆうき。有る、希」

名は体をあらわす。名付け親は、軽いものでは無い。俺が、名をつけていいはずはない。それでも、名前が無い、ままでは。ここにつなぎとめる、呼び掛けも出来ない。

「おいで、光希。……これ、作り方。教えてあげる」

魔力を、果実に変える手法。その魔力をどこから確保するかは、君に任せるよ。俺が君に与えられるのは、もうこれだけ。名前と、手段だけ。兄は名乗れない。あれが父だと示せない。だからせめて。

「5年だけ。教えられることは教えるよ」

君たちの生を、少しでも確かなものにするくらいはさせてよ。
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さん (8zf1pchi)2024/3/2 22:21 (No.97058)削除
天使の母と人間の父との間に生まれた美しい双子。

兄は瞳が母似で見た目が父似。
妹は瞳は母似だったが、見た目は父に似ていなかった。

父親は母親を問い詰めた。
『これはどういうことだ』
と。

だが母親は首を横に振る。
『分からない』
と。

父親は母親に怒りをぶつける。
『そんなわけがないだろう』
と。

しかし母親も反論する。
『本当に知らないの』
と。

知らないはずもないのに。

父と母の喧嘩は、彼らの息子が2人を殺すまで毎晩続いた。

父親は妹を嫌い、兄ばかりを優遇した。

母親は妹を愛し、兄には手をかけなかった。

父親は兄を可愛がり、悪意も善意も全てを許した。

母親は兄を放置し、全てを投げ捨てた。

父親は妹を見る度にゴミを見るような目で見つめ、しばしば手を挙げることもあった。

母親は妹を守り、愛を与え、悪意を滅し、善意を分け与えるよう教えた。

兄は善悪の区別もつかずに育っていった。

妹は悪を嫌い、愛を分け与える優しい子に育っていった。

兄は段々と両親を恨むようになった。

妹は人々に愛を分け与え続けた。

兄は初めて妹に致命傷を与えた。

妹は致命傷を与えられて種族特有の幼体化してしまった。

母親は兄を責めた。

父親は兄を庇った。

兄はついに両親をその手にかけた。

妹は実の父の存在について知った。

兄は殺した両親を妹にバレないように海に投げ捨てた。

妹は実の父が遺した魔具を誰にも見られないように隠した。

兄は両親の心配をする妹を優しく抱きしめた。

妹はいなくなってしまった両親を心配して泣いた。

兄は妹の全てを手に入れたいと思い始めた。

妹は兄の狂気に気付かなかった。

兄は眠っている妹を犯した。

妹は途中で起きたが、兄によって記憶を改ざんされてしまった。

兄はその日から何度も妹を犯した。

妹はその日から何度も記憶喪失になった。

兄は再び妹に致命傷を与えた。

妹は再び幼体化の力で幼児に戻ってしまった。

兄は妹への執着を拗らせていった。

妹はまだ兄の狂気に気付かなかった。

兄に子供ができた。

妹は甥の誕生を喜んだ。

兄は伴侶を殺した。

妹は激怒するも兄は聞く耳を持たなかった。

兄は次第に本性を顕にしていった。

妹は兄の本性にまだ気付かなかった。

甥はなんとかして育て愛してくれた叔母を守りたいと思った。


妹に想い人ができた。

甥は叔母の幸せを願った。

兄はそれをよしとしなかった。

妹についに婚約者ができた。

甥は喜んで2人を祝福した。

兄は焦った。


兄は妹を騙した。

妹はまんまと騙された。

兄はその手を汚さず妹に婚約者を殺させた。

妹はそれに気付いて兄を問い詰めた。

兄はあっけらかんとした顔で答えた。

妹は激怒して兄に剣先を向けた。

兄は初めて妹を睨んだ。

妹は兄に決別を告げた。


双子は初めて互いを殺そうと戦った。

双子は初めて互いに殺意を持った。

双子は初めて虚しさと悔しさ、高揚感と興奮を感じた。


兄は妹に問いかけた。

妹は兄を睨んで答えた。

兄は妹に3度目の致命傷を与えた。



甥は叔母を丁寧に大切に育てた。

妹は3歳の大きさにもなれば幼体化以前の記憶を全て取り戻していた。

甥は次こそ叔母を幼体化させないように、と大切にしていた。

だがその努力も虚しく何度も兄は妹に致命傷を与え続けた。


9回も致命傷を与えた兄。

9回目の幼体化を経験した妹。

6回目の幼体化を見守るしか出来なかった甥。

甥の精神はボロボロだった。

妹は覚悟を決めた。

妹は何度も繰り返された結末に終止符を打つことにした。

兄は何度も同じように、追い詰めた妹に剣を振り上げる。

妹はその隙を狙って魔法をかけた。

1度しか使うことが出来ない、実の父親が遺した魔法を。


甥の目の前には子供が2人いた。

叔母のような性格をしているが、どこか父の残酷さを彷彿とさせる父の姿をした何かが。

父のような性格を少しマイルドにしているが、優しさを隠しきれない叔母の姿をした何かが。

甥は全てを察した。

叔母があの魔具を使ったのだと。

上手く制御が出来なかった魔具を使って"全てを反対にした"のだと。



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《καθρέφτη μαγεία》
とある条件下のもと、魔力、体力、寿命を大量に使うことによって扱うことが出来る魔具。

ポルスの実の父親がポルスに遺したもの。

とある条件を満たすと扱いの難しい魔具になる。

ポルスが使用した際に粉々に砕け散ってしまった。

本来ならば鏡を覗いた人物の罪を暴くものである。

ルーカスの能力『Libra(リブラ)』の魔具バージョンでもある。


とある条件、それは"何もかもが正反対な人間2人を鏡を写すこと"。

その条件を満たした時、鏡は写った人間の性格も見た目も交換させてしまう。

この魔具を使用してしまったため、ポルスの魔力量が少なくなってしまった。

また、理性に歯止めがかからなくなるようになってしまい、特別な相手にだけは我儘になってしまうことがある。

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甥は2人に問いかけた。
『…私のことを知っていますか?』
と。

2人は顔を見合せて微笑んでから答えた。
『もちろん』
と。





















『Libra』。

魔法の鏡と同じような力を持つ能力。

ルーカスが扱うことの出来る能力。

天秤にかけられた人物の罪を暴く能力。




2人が正反対になってから、2人は鏡を見ることを極端に嫌がるようになった。

甥も2人の思いを汲み取って、家には鏡を置かないようにしていた。



ルーカスは好奇心に身を任せてしまった。

『Libra』を使用した状態で鏡を見てしまった。

安直な考えだった。

"自分にはどれほどの罪があるのだろう"と。

能力の使用者であるルーカスの罪を計るのは難しかった。

ルーカスが天秤を手にしていないと能力は発動されない。

だから鏡を使った。

鏡に写った自分の姿を天秤にかけた。

天秤は悪意の方に大きく偏って砕けてしまった。

驚くルーカスの耳に聞こえる男の囁き声。

『お前は本当にそれで満足か?』

ルーカスは怯える。

『本当に今のままでいいのか?』

慌てて後ろを振り返るも誰もいない。

『本当のお前はそんなんじゃない』

左右を見ても誰もいない。

『本当のお前は違うはずだ』

ルーカスはゆっくりと鏡を見た。

『お前は誰だ?』

鏡に写ったルーカスは少女のような姿をしたルーカスではなかった。

長身の男。

ニヤリと笑い、ルーカスを見る。

ルーカスは思わず後退りをした。

再び聞こえる。

『お前は誰だ?』

ルーカスは声が出せない。

『お前は誰だ?』

ルーカスは怯えて涙目になる。

『お前は誰だ?』

ルーカスは首を横に振る。

『お前は誰だ?』

ルーカスは目をぎゅっと瞑って俯く。

『…目を逸らすな』

その瞬間、グイッと顎を捕まれルーカスは無理やり鏡に向き合わせられる。

ルーカスの瞳から涙が零れた。

鏡に写る長身の男は怯えて泣くルーカスを見て満足そうに笑った。

『お前は俺だ』












ポルスは変わってしまった姿を見て悲しそうに微笑んで呟いた。
『結局、私じゃあの人を抑えられない…』
と。

薄紫色のミディアムヘアに黄色の瞳。

エレノアは目の前で変わったポルスの姿を見て最悪の事態を想像して青ざめた。

ポルスは青ざめたエレノアを見て優しく微笑んだ。
『大丈夫よ』
と。

ポルスはエレノアの頭を撫でた。

エレノアがまだ幼い頃にしていたように。

優しく、母のような優しさで。

エレノアは母に甘えるかのようにポルスに抱きついた。

その手は震えて、酷く怯えているのが分かる。

ポルスは優しく宥めるようにエレノアの背中を撫でた。

だがその瞳は決意を宿していた。

"抑えられないのなら、殺すしかない"と。





ルーカスのいた場所には長身の男が立っていた。

赤い長髪を下ろした黄色の瞳を持つ男。

ニヤリと楽しそうに笑って呟いた。

『せいぜいやって見ろ』
と。





狂った愛に執着された双子の殺し合いが再び幕を開けてしまった。​
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柚子カレーさん (8zml5wu2)2024/2/27 14:23 (No.96537)削除
「………」

男が、1人がけのソファに座っている。浅く座ったまま背もたれによりかかり、肘掛に頬杖をつき。なにか、考えるように見つめる先は、女の眠るベッド。生きて帰れ、と、約束した女。約束させた、女。その肉に、もはや魂はありはしない。約束は、果たされなかった。

ひとつ、深く息を吐いた男は、ようやくソファから立ち上がり、その女の体へ覆い被さる。ああ、小さい。こんなにも小さい子だったと言うのに。その手が、首へと伸びて。細いチェーンで提げられた指輪を、力任せに引きちぎる。鼓動もない肉体では、傷ついた首から血がふきでることも無く。少しの血が、シーツに滲んだだけだった。
約束の証。手ずから貴女の指に通したそれは、いつの間にか指ではなく、首にさげられていた。あぁ、ひどいなぁ。剣を握るに邪魔になろう。戦いの最中で邪魔になろう。そんなの分かってるんだよ。分かってるから渡したのに。少しでもそれが傷つくのを躊躇って、剣を握らなくなってくれればよかったのに。

男は、指輪をサイドテーブルにそっと置いた。それを皮切りに次々と女の体から装飾品を引き剥がす。サイドテーブルに大切に置かれたのは最初の指輪だけ。それ以外は全て、無造作に床に投げ捨てられる。
そこまですれば、男はよろめくようにして、再びソファへともたれ掛かる。
白い、死体。白く美しい、その肢体。いくらかの傷は、女の名誉で、誇りだったもの。けれどこうしてみれば、生の間に女の体が損なわれたことだけが重くのしかかる。
その身に傷をつけるのは、俺だけでよかった。俺だけが良かった。爪を立てるのも、牙を突き立てるのも。その全てを、俺だけの権利として、大切に抱え込みたかった。なのに、ねぇ。貴女はその中でも、一番大きな、命を奪う権利を。誰かさんにあげちゃったんだね。

ため息とともに、もう一度男は立ち上がる。女の体を一瞥して部屋を出た男は、数十分の後に、3本のナイフと、大量の塩の入った桶、水の入った桶を用意して戻ってきた。骨すきナイフ、脱骨ナイフと、筋引きナイフ。本来男が見るのも嫌うそれ。それらは、本来この家に無いものだ。男が、いま入手してきたものである。
それらをサイドテーブルにならべ、男はまず骨すきナイフを手に取った。正中線に沿うように、その皮をはぐ。ああ、難しいな。愛しい人に刃を立てるのが、こんなにも難しいとは思わなかった。あれほど美しく、快活とした貴女が、ぶよぶよとした肉の塊になってしまうとは、思いたくなかったよ。
途中何度か嘔吐きながら、それでも男はナイフを進めていく。剥がれたその皮は、丁寧に畳まれ、塩の中へと沈められる。そうして、もう一度ナイフを握ると、その腹を割った。心臓、肺、胃……五臓六腑が丁寧に抜き出され、水の中に晒される。中まで綺麗に洗って、それらも塩の中へ。ねえ貴女。貴女の臓腑は美しいね。滑らかで、鮮やかで、艶めいている。

次に、脱骨ナイフと筋引きナイフを手元におく。使うのは脱骨ナイフ。肉と骨の隙間を広げていく。骨から剥がれた肉に、筋引きナイフを差し込み、肉の塊へと切り分けていく。その工程を、ただ繰り返す。肉の塊は、そのままシーツの上に転がされたまま。いつの間にか日付も変わり、もう半日以上はその肉と格闘している。初めて行う作業だ。関わりたくもない作業だ。それでも、これだけは男の手で行われなくてはならない。
最も大きな権利を奪われたのなら、取り返さなくてはならない。埋め合わせなくてはならない。女の魂を奪われておいて、肉体まで奪われてなるものか。男を動かしているのは、たったそれだけの意地。
ねえ。土なんかに還してしまって。貴女がどれか、分からなくなってしまう。俺はそんなのはゴメンだ。蛆に食われ、溶かされた土の上にある、ただの石。そんなものに対して、貴女の名前を呼びたくない。

解体しながら、男はその肉を口に運ぶ。疲労と空腹を、その肉で無理やり満たしていく。奪われた権利を、その朒で充たしていく。女だったものだ。女を構築していたもの。だが、もちろん今その全てを食べることは叶わない。やがて、骨と、その周りに切り分けられたままの肉だけが残る。残った肉を塩漬けにし、冷蔵庫へと運び込む。己の体が血にまみれているのも、廊下に血が流れているのも。何一つ、男の意識の外だった。

そうして部屋に残ったのは、血や肉片でグズグズと汚れたベッドと、その形のまま残され、綺麗に削がれなかった肉の残る、女の骨。ようやく一息ついた男は、そのまま小さな毛玉へと変容し。もはや熱のない、冷たい肋の中へと潜り込む。プスプスと鼻を鳴らし、不快そうな顔をして目を閉じる。暗く、狭く、血にまみれて、到底快いとは言えないその空間。本来ならば触れることすら出来ぬ肉の内。どれほど交わって、精を注いだとて、男のものになりはしない五臓六腑、その抜け殻。その中で、男は一晩を明かした。

ジリジリとうるさい目覚ましの音に目を開ければ、男は肋のなかから這い出て、再び人の形をとる。骨をシーツで大切につつみ、抱き上げる。軟骨も、筋もちゃんとはがせていないから、バラバラになりそうでならないそれを、リビングへと運び、そのまま女の定位置へと座らせる。貴女はよくここに座っていた。俺はその隣で、貴女が伸ばしてくる手を掴んで、一緒に座っていた。男は骨すきナイフを片手に握りしめる。長く伸びた髪をひとまとめに掴み、ばさりと切り落とし、それを女の膝の上へとのせる。俺がどうして髪を伸ばし始めたのか。貴女は知らないでしょう。見られたから。貴女に、あんなにも攻撃的な姿を見られたから。すこしでも、印象を良くしたかった。それだけだったから。だからもう、この髪は要らなくなってしまった。けれど貴女とあった時間の証明でもあるから。どうか貴女が持っていて。

冷蔵庫の中から、内臓を取り出し、水で塩を洗い流す。そして、女の首にさげられていた指輪。それらを皿に乗せ、リビングへと運ぶ。テーブルに並べたそれらに手を合わせ、ナイフもフォークも使わず、手づかみでそれらを口に運ぶ。男は肉の臭みを得意としていない。ましてや生である。けれど、吐き出さず、水で流し込むこともせず、ただ黙々とそれを口に運ぶ。指輪さえ、腸でくるんで飲み込んだ。ようやくさらに乗せた全てを腹に収めた頃には、男の顔色は土気色になっていた。皮も、肉も。腐らないうちに食べきらなくては行けないのに、こんなことでは先が思いやられる。
貴女の肉を、調理などするわけに行かないのに。貴女の身を、焼いて、揚げて、損なわせて食べるなど。貴女の身を、なにか別の味で誤魔化して飲み込もうなど。そんなこと、考えられもしない。貴女は、貴女のままであって、十分に完成されているのだから。

そこまでして、ようやく男は体が血にまみれていることに気がついたようで。バスルームへと向かうと、シャワーのコックを捻った。最早酸化し、赤茶けたそれが排水溝へと流れていくのをぼんやりと眺めていれば、ようやく実感が心に追いついて。ゆっくりと、涙が溢れ出す。排水溝へ流れるものが、既に色がなくなっても。男はしばらくそうしていた。

男はタオルを被っただけで出て来れば、再びキッチンへと立つ。取り出したのは大根。それをおろし金ですりおろし、手ぬぐいで包む。それを手に、家中を徘徊して回り、床やろうかに染み付いた血を洗い落としていく。そうして、寝室へとたどり着けば。そこにあるのは、赤かったはずのベッド。赤くなっていたはずの、ベッド。だが、酸素に触れた赤は、既に黒くなっていた。
嗚呼、貴女はあんなにも美しかったのに。あんなにも鮮やかな焔を持っていたのに。なのに、その赤すら残りはしない。その赤の証明すら、凡夫と変わらぬものに成り果てる。

「……朱雀の血も、黒くなるんだなぁ……」

床や壁の血は落とせたのに、その黒いベッドには触れられず。男は、またリビングへと足を向ける。生きていた頃のように、シーツに包まれた骨へと寄り添い、男は笑った。

「愛してるよ、レンカ」

ダンス・マカブルだって、貴女となら踊れそうなくらい。
匿名さん (8zml5wu2)2024/3/2 20:57削除
その後のイェンス。乱雑に切った髪と、金蓮花の刺青。
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さん (8zf1pchi)2024/2/27 22:36 (No.96629)削除
夜、深夜とも言える時間。
使用人ならば普通は既に部屋に戻って就寝している時間にその少女はその家の旦那様の部屋の前にいた。
胸はまだ主張しておらず、生理すらきいていない、どう見ても少女と言える体型をしている。
身にまとっているのはとても少女の見た目年齢には似合わないネグリジェ。
ほとんど布がなく、服と言えるのかどうかも怪しいものだった。
少女の瞳には光が宿っておらず、生気を感じられなかった。
コンコンコン、3回のノック。
中から旦那様の声が聞こえ、少女は扉を開けた。
中に入った少女を見て旦那様はほくそ笑む。
少女にベッドの上へ乗るように告げ、自らが纏っていたバスローブを脱いだ。
少女は言われるがままベッドの上へと乗る。
旦那様と向き合えば旦那様はとても人とは思えないような笑みを浮かべて少女の両肩に両手を置く。
『何も怖がることは無いんだよ』
そう言って笑った。
少女は頷くばかりで微笑むことも出来なかった。
旦那様は少女の肩を優しく押してベッドの上に倒す。
ニヤリと笑った旦那様を見て、少女は諦めたように瞳を閉じた。







ペタペタペタ、と素足で廊下を歩く少女。
時折フラついており、少女の太ももに白い液体が伝う。
少女は廊下と部屋の間にあるトイレの中に吸い寄せられるように入っていくと、便座を上げて吐いてしまった。
夕飯として食べたもの全てを吐き出した。
だがそれでも少女は吐くのをやめない。
もう何も出ないというのに吐き続け、遂には吐血までしてしまった。
吐き続けたことによって喉を痛めたのだろう。
血を吐いてからようやく吐くのをやめた。
その場にへたり込むと疲れからか肩で息をする。
床に手をついて上半身だけは何とか支える。
体を支えている両手の間に雫が滴り落ちる。
少女は泣いていた。
まだ年端もいかない少女、まだ女としての初めてを奪われるには早すぎた。
しかもそれが、自分が仕える相手の父親となれば尚更だ。
気持ち悪くてしょうがなかった。
更にいうなれば、これがその仕える相手への筆おろしの前戯とも言えること、それが余計少女を傷付けた。
旦那様ですら気持ち悪かった。
兄のように慕っていた彼の前でいつものようにいられる自信がなかった。
もう二度と彼の前では笑えない。
彼の前にいることすら嫌になるかもしれない。
でも、離れたいとは思えない。
きっとこの感情は少女の我儘であり、まだ気付いていないが恋情だ。
少女は一息ついて立ち上がると吐いたもの全てを流して手と口を洗い、また廊下へ出た。
向かう先は自分の部屋。
明日の夜は彼の初めての相手だ。
失態は許されない。
今のうちに、全てをあきらめなければ、全てを捨てなければ。
少女は強かに前を向いて再び歩みを進めた。






















翌日、昨晩とほとんど同じ時間に少女は兄と慕う主人の部屋の前に立っていた。
少女は再び、服とは言えないほど布面積の少ないネグリジェを纏っていた。
しかしその顔は昨晩とは違う。
無表情でこそあれ、どこか諦めと虚しさを感じているように見えた。
コンコンコン、昨晩と同じように3回のノックをする。
中から彼の声が聞こえる。
少女は扉の取ってに手をかけて、扉を開けた。​
さん (8zf1pchi)2024/2/28 19:19削除
ロディは、女として必要な出来事全てを終えると両親からは常に男で居るように迫られた。
ロディも最初からそのつもりで、彼への筆おろしが終わったら女の自分を捨てるつもりだった。
でも捨てさせてもらえなかった。
旦那様が少女としてのロディを求めたから。
旦那様に抱かれる度に少女の姿をしているロディは吐いた。
胃液すら枯れるほど吐いて、喉を傷つけて。
だが彼に抱かれたあの時は不思議と旦那様の時のような不快感はなかった。
不快感こそなかったが、虚しさだけがあった。
女としてしか求められないのか、男としての自分は要らないんじゃないか。
ロディは両親に責められ、また旦那様に初めてを奪われた時に言われた言葉のせいも相まってどんどん自己肯定感がすり減っていった。
幼い頃の、彼を兄だと慕っていた頃の少女とはまるで別人のようになってしまっていた。
よく笑って彼を海の中へ連れ出したりしていた幼い少女。
性的な教育をされ始めてからは少しばかり接し方が変わったが、それでも兄として慕っていたのは変わらなかった。
でも今のロディには彼を兄として慕う心は無くなっていた。
彼の男の顔を見てしまったから、今まで知ることがなかった彼の男としての性の象徴を見てしまったから。
兄のそれを見て、自分が相手をして初めてを奪ったとしても兄として慕うことが出来る人間がいるのならば狂っている、と思うほどには傷付いてもいた。
昼間はほとんどを男として過ごし、夜は呼ばれるがまま女として性の発散を手伝わされる。
人魚という種族柄、顔は悪くない。
女として生きるにしても男として生きるにしても苦労はしないだろう。
だが両性、可変ができるタイプの人魚となると、ほとんどの人魚が思春期を迎える頃までには自分の性別をどちらかに決める。
けれどロディは自分の性別を決められずにいた。
両親には嫌われる女の自分、もちろんロディだって女の自分は嫌いだ。
けれど旦那様は少女としてのロディを求めている。




どちらになるかも決められないまま成人を迎えてしまっていた。




10年前、誕生日を祝われるよりも先に性教育を施された。
いつか来る仕事のため、旦那様の慰み者になるため。
嬉しくもない10歳の誕生日だった。
祝ってくれたのは彼だけ。
数多いる使用人の1人でしかないロディの誕生日を祝ってくれた彼。
朝からずっと性に対する教育ばかりを受けて、初めてのことばかりを教え込まれてわけも分からず疲れていた。
折角の誕生日だというのに嬉しくなかった。
けれど彼に祝われた時、嬉しくて泣いて喜んだかもしれない。
20歳になれば幼い頃のことなんてほとんど覚えてないけれど嬉しかったのは事実だ。
その日からロディの心の支えは彼だけ。
彼の傍に居れるなら、どんなに辛い教育でも耐えようと思っていた。
いつだったか、もう思い出したくもない初めてを奪われた日、その日ロディの心はほとんど壊れてしまった。
繋ぎ止めてくれたのは彼の存在。
彼がいるから生きていなければ、そう思って日々どんなに辛いことでも耐えてきた。
だが今でもその心は傷付けられ続けている。



青年となった今ですら、何度も何度も両親から『坊ちゃんと仲良くするな』『女の姿でいるのをやめろ』と言われ続けており、逆に旦那様からは"癒し"として女の姿を求められ続けている。
逆らうことができない両親と旦那様との間で板挟みとなり常に圧とストレスのせいで心が押しつぶされそうになっている。
それでも生きようと思えるのは彼がロディを傍に置いてくれるから。
だから生きようと、彼の役に立とうとしている。
主人と執事の関係、いつか彼も旦那様の跡を継いで家庭を持つ。
その時、もしかしたらロディは要らない存在になるかもしれない。
そうなったらきっと、ロディは彼に、いや誰にも知られないような場所で命を絶つだろう。
だって存在価値がないのだから、もう用済みなのだから。
彼からその存在自体を例え遠回しでも要らない、と言われたらロディは生きる意味が無くなる。
生きる意味がないのに生き続けることは出来ないだろう。
今でさえ、死にたいという思いが夜寝る前に溢れてきて死のうとした事が何度もあるのだから。
その度に、彼を悲しませてしまう、せめて要らないと言われるまでは、とロディは自分を奮い立たせたていた。
だがそれが無くなったら。
考えたくもない未来を想像しては1人涙することもあった。
それ程までにロディの心は限界だった。
だがそれを察してくれる人も、助けてくれる人もいない。
1人で抱え込むしか無かった。





かつて旦那様に言われた言葉、仕込まれたもの。

『男である時はリーを支えればいい。支え、守ることしか男であるお前には出来ないのだから。だが女である時は私やリーを癒すことだけを考えなさい。女とは男を癒すために存在するのだから。お前のその薄く幼い体でも癒すのに十分だ。私が今から仕込むことをリーにもやってみなさい。顔や言葉では嫌がったとしても、体は喜ぶだろうからね』

それは男としてのロディも、女としてのロディもまるで物として扱うようなものだった。
その時ロディの心が壊れかけ、そのような思考になってしまった。
自分は物だから、要らなくなったら捨てられるだけ。
だから要らなくなったら自ら命を絶つ。
それが1番潔い去り方だとロディは思っている。

将来、ロディを自由にする為とはいえ彼が手放したらロディはきっと死を選ぶだろう。​
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ヘルさん (90xdn9d1)2024/2/22 14:38 (No.96026)削除
父と呼ばれるものは最低だった。酒に明け暮れ妻を殴り女を探す。最低な男だった。


「おい!何故酒がない!」

「あ、貴方横にありますわよ」

「空だからいってんだよ!」


これが毎日だった。そのあとは母は殴られて蹴られた。



兄と呼ばれるものはいつも守ってくれていた。

まだ幼い彼女を、妹と呼ばれる者は兄に寝室へと連れていかれ眠りについた。

ここから聞こえる父の怒声、母の泣き声、兄は絶対この子を護ってやる、そう決心した。

ある雷のなる晩に出来事は起こった。

父は夕方に母を殴り家を出た。

兄も殴られて、頭から血を出している。妹は泣きじゃくる

父に優しくして貰えるのは妹だけだった。父の血を多く受け継いでいるからだ

だが、妬む事もなく母と兄は彼らなりの愛情を注いだ

食事の時は母が自分も栄養を取らないといけないのにおかずを妹にあげた。

ある夜父親は散々兄、母を殴った挙句何処かへ行った。

家族三人が眠りについた時引き戸が開いた。

それに気づいたのは兄だった。

どうせ父親だろうと思ったが火の音がする。すぐに起き上がり引き戸を見る。人間だ。

そう思った矢先。弓矢が放たれた。兄の心臓目掛けて。何とか避けたが腕を貫通。

兄の呻き声に目を覚ました母は人間の胸めがけ刀を振る。

1人倒したがその後に母も切られた。その時に



「零落…!生きてちょうだい」


と妹に覆い被さり息絶えた

一方兄は能力を使用しばったばったと人間を倒したが、とある人間が最期の力を振り絞り

「忌まわしい鬼どもめ!ここで息絶えろ!」と言い兄に刀を振り回した。兄は絶命した

妹は出来事の後泣きじゃくった。

時間が経ったら泣き止みここに居ては行けないと思い母の上着、小刀を持って走る。

人間に見つからないように息を殺して…



ここで目が覚めた。ずいぶん昔の夢、兄と母が死んだ日今日は命日だ。墓参りに行かなくちゃ

山奥に1人紅の上着を揺らし短い髪を揺らして土葬してある2つの墓へ行く

「久しぶり、母様、兄様」そう言って花を手向ける女が1人、彼女が手向けた花は

カーネーション・アイリス・キンセンカ・スターチス
りんどう・グラジオラス・ケイトウ・ユリ

と一般的社会における墓参りの花である。2人の墓に花を置き手を合わせる。













守れなくてごめんなさい。


これから彼女は母、兄のために生きられなかった分生きてゆくのだろう。
ヘルさん (90xdn9d1)2024/2/28 17:23削除
後から追加されたものだろう。
宴好きの妻が好きだった「紫苑」を墓の前に置いてあった
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